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記事更新日:2019年03月09日

看護師の給料には、病院の規模や地域などの「社会的条件」と、正規雇用、パートやアルバイト、派遣などの「雇用条件(働き方)」によって生じる差があります。

この記事では看護師の給与に影響を与える条件ごとの傾向を示し、看護師の収入の実態を詳しく解説します。
また、看護師側の条件である「経験年数」や「能力」と給料の関連を、転職の観点から解説します。

1. 看護師の給料・年収

看護師の平均的な給料や年収は、医療職やほかの仕事に従事する人の給料に比べて高い傾向にあります。また、看護師の給料には、業態や病院の規模、地域による差があります。

この章では、看護師の給与や年収に差をもたらす条件ごとの傾向を、調査データをもとに解説します。

1-1. 看護師の平均の給与・年収

看護師の平均的な給料・年収は以下の通りです。

<表1看護師の平均的な給料、ボーナス、年収>

調査対象の全平均 給与 年間賞与 年収
看護師 女性 38.5歳 勤続年数7.9年 328,600 831,700 4,774,900

(単位:円)

看護師の平均的な給料は、女性38.5歳 勤続年数7.9年で328,600円、ボーナスは年間で831,700円、年収は4,774,900円となっています。

* 給料(給与)とは、会社から支払われる労働の対価(賃金)で、所得税や社会保険料が引かれる前、さらに時間外手当や夜勤手当など含む総支給額をさします。さらに給料とは別に、夏季や年末に支給されるボーナス(賞与)を含んだ年間の総収入を年収といいます。

一般的に給料や年収の高い職業といわれる看護師ですが、看護師の平均的な給料と年収を、同じ医療職やほかの仕事に従事する人の給料・年収と比較してみましょう。

<表2 看護師とほかの職業との平均的な給料、年収の比較>

調査対象の全平均 給与 年間賞与 年収
看護師 女性 38.5歳 勤続年数7.9年 328,600 831,700 4,774,900
放射線技師 男性* 42.1歳 勤続年数12.0年 383,900 931,100 5,537,900
臨床検査技師 女性 37.9歳 勤続年数10年 305,900 818,800 4,489,600
理学療法士および
作業療法士
女性 31.1歳 勤続年数5.3年 274,700 621,800 3,918,200
栄養士 女性 34.7歳 勤続年数7.0年 234,300 576,100 3,387,700
薬剤師 女性 38.7歳 勤続年数7.0年 355,100 762,400 5,023,600
販売店員
(百貨店店員を除く)
女性 38.5歳 勤続年数7.8年 204,300 266,900 2,718,500
美容師 女性 30.5歳 勤続年数6.8年 220,700 65,500 2,713,900
航空機客室乗務員 女性 32.4歳 勤続年数8.1年 337,800 651,100 4,704,700

*放射線技師は男性のデータのみ (単位:円)

<グラフ1 看護師と他職種の年収>

看護師と他職種の年収

(厚生労働省:平成27年賃金構造基本統計調査より)

上記のデータは、職種ごとの全調査対象の平均を算出したもので、平均年齢や平均の経験年数が異なります。(放射線技師については女性のデータがないため男性と比較しています)

看護師の年収は4,774,900円と、ほかの医療職よりも高い傾向にあります。
また医療職以外のおもな女性の職業(販売店員・美容師・航空機客室乗務員)と比較すると、看護師の年収はかなり高い水準にあります。

さらに年代別による年収の推移はこのようになっています。

<グラフ2 看護師の年代別年収>(経験年数や役職は問わず)

看護師の年代別年収

(厚生労働省:平成27年賃金構造基本統計調査

看護師の年収は、新卒時から400万円近くと高く始まり20代のうちは昇給幅も大きくなっています。しかし20代後半を過ぎると40歳まではほとんど伸びはなく、40代後半~50代前半でピークを迎えます。

1-2. 業種・業態による給料・年収の違い

看護師が働く場所や働き方はさまざまです。その働く場所や働き方による給料や年収の特徴をみてみましょう。

<表3 働く場所や働き方別 看護師の年収>

働く場所 経験年数/働き方の一例 平均年収
病院(病棟勤務) 経験年数6~10年 夜勤あり 4,930,359
病院(外来勤務) 経験年数6~11年 日勤常勤 4,021,893
介護施設 経験年数6~10年 夜勤あり 4,693,288
訪問看護 経験年数6~10年 日勤常勤 4,224,366

(単位:円)
(看護roo:ナースなワタシのお給料

同じ病院勤務の場合でも、病棟勤務と外来勤務では病棟勤務のほうが平均年収は高くなっています。
病棟勤務には夜勤があり、また時間外勤務も多く、これらに対する手当が支給されることが看護師の収入の差となります。

介護施設の場合も夜勤や時間外勤務の有無によって収入に幅があります。

さらに介護施設に就職する看護師の多くは、勤務経験のある「転職組」ですが、看護師の経験年数のすべてが評価されるものではないため、病院に比べ看護師の給料や年収は低くなります。(*転職に関する給料の変化については、2-34-3-*参照)

訪問看護は看護師の需要が高いことから、基本的に夜勤がなく、土日も休みという働きやすさの割には、給料、年収は比較的高い水準にあります。(*訪問看護の給料については、4-3参照)

1-3. 施設規模による給料・年収の違い

病院の設置主体(経営や運営をしている機関や団体)や規模による給料の違いを見てみましょう。

<表4 病院の設置主体別 看護師の給料と年収:31~32歳 勤続10年 非管理職の場合>

平均給与
全体 318,010
独立行政法人国立病院機構ほか国の設置病院 336,161
都道府県・市町村立などの公立病院 332,909
公的医療機関(日本赤十字社・済生会など) 331,518
公益法人 318,919
私立学校法人(大学病院など) 357,059
医療法人・個人 307,452

(単位:円)(日本看護協会:看護の賃金水準データ2013年版

設置主体別では、私立学校法人(大学病院)が最も高く、次いで国や公立、公的機関の病院、最も低いのが医療法人や個人の病院となっています。
さらに、病院の規模(入院病床の数)と看護師の給料にも大きな関連があります。

<グラフ3 病床数別 看護師の給料:31~32歳 勤続10年 非管理職の場合>

病床数別看護師給料

(日本看護協会:看護の賃金水準データ2013年版

病院の規模が大きいほど看護師の平均給与は高くなっています。

大学病院や国、公的機関の病院は、病床数も多く、高度医療や専門医療を行う収益性の高い病院が多い傾向にあります。
看護師の給料はこうした医療構造の影響を受けています。

1-4. 男女による給料・年収の特徴

看護師の給料・年収やその他の待遇に性別による違いはありません。
しかし、以下のグラフに見るように、全体的に男性のほうが高い傾向には、男女による働き方の差が関連しています。

<グラフ4 男女別にみる看護師の年代別年収>

看護師の年代・性別年収

(厚生労働省:平成27年賃金構造基本統計調査

新卒時から20代前半までは男女の年収差はありませんが、20代後半から女性のほうの年収が低くなります。

女性が出産や育児により一時的に退職し、その後パートやアルバイトなど短時間就労による賃金差が、全体の男女の年収差として表れています。

また男性看護師の数は年々増加し、体力を要する救急部門や手術室などや、業務上の危険が伴う精神科や放射線科など比較的年収の高い部門での就業が増えています。

1-5. 地域による給料・年収の違い

看護師の給料・年収には都市部と地方による地域差があります。

<表5 都道府県別 看護師の平均初任給(抜粋)>

  平均初任給(高卒+3年過程)
神奈川県 208,463
東京都 207,299
大阪府 206,130
愛知県 201,114
青森県 183,721
熊本県 183,460
佐賀県 183,368
宮崎県 179,519

(単位:円)

(日本看護協会:病院勤務の看護職の賃金に関する調査

看護師の平均初任給においても、首都圏や主要都市の初任給が20万円を超えているのに対し、地方ではそれに満たない水準にあります。

このような都市部と地方による給料・年収の差は、看護師だけに限ったものではありません。
多くの産業において、物価や家賃の違いを受け、地方より都市部のほうが平均賃金は高くなっています。

2. 看護師の収入の実態

看護師の給料は、基本給と諸手当で構成されています。

ほかの仕事に比べると、初任給が高く、経験年数によって収入が増えていきます。
この章では看護師の収入の中身と、モデルケースによる年代ごとによる具体例を解説します。

2-1. 看護師の給料の内訳

看護師の給料は、大きくは基本給と各種手当に分かれます。

・基本給

基本給は、病院や施設ごとの規定や給与表で定められた給料の基本となる部分です。

・各種手当

病院、施設ごとに種類や呼称もさまざまですが、おもに以下のような手当があります。
夜勤手当 夜勤に対して支給される手当で、病院、施設ごとに1回の夜勤に対する支給額が定められています。

<表6平均的な1回の夜勤手当>

3交代 準夜勤手当 3,983
深夜勤手当 4,953
2交代 夜勤手当(準夜深夜合わせて) 10,711

(単位:円)
(参考:日本看護協会 「2015年病院看護実態調査」)

住宅手当:住居の賃貸料や持ち家の住宅ローンに対する補助として支給される手当です。

家族手当:家族を扶養している人に対して支給される手当です。

役職手当:管理職や役職に就いている人に対して支給される手当です。

資格手当:看護師という資格に対して支給される手当です。准看護師と区別して定められています。

通勤手当:通勤の費用に対して支給される手当です。通勤の手段や距離によって支給の有無や上限額が定められています。

看護師の給料は基本給+手当で支給されます(総支給額)が、そこから社会保険料(健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料)と税金(所得税、住民税)が差し引かれて支給されます(手取り額)。

2-2. 看護師の初任給

看護師の初任給(新卒で始めてもらう給料)は、ほかの仕事の初任給に比べて高い傾向にあります。

<グラフ5 看護師と他の職種との平均初任給 *各種手当を除く>

平均初任給

(日本看護協会:看護の賃金水準データ2013年版

(人事院:平成27年職種別民間給与実態調査

新卒の看護師は、国立または公的病院や大学病院付属の養成機関(看護大学や看護学校)を卒業し、そのまま系列の病院または、比較的大規模の病院に就職する傾向があります。

新卒看護師の就職先となるこれらの病院は、平均給与が高く(*1-1参照)、初任給も高くなっています。

また、看護師間でも学歴差があり、高卒+3年過程卒の看護師に比べて、大卒の看護師のほうが、初任給は高くなっています。

<表7 学歴別 看護師の初任給>

基本給与 手当税込み給与
高卒+3年過程卒の新人看護師 197,689 262,074
大卒の新人看護師 204,683 270,201

(単位:円)
(日本看護協会:看護の賃金水準データ2013年版

2-3. 看護師の昇給とモデルケース

看護師の給料は勤続年数や年齢、経験に応じた昇給(基本給があがること)があります。

2-3-1. 昇給について

次のグラフは経験年数ごとの看護師の年収の変化を示したものです。このように経験年数が長くなるごとに年収は増加します。

年齢や勤続年数に応じて自動的に昇給する定期昇給のほか、能力や仕事の実績が評価されて昇給する場合があります。

<グラフ6 経験年数別 看護師の年収>

経験年数別看護師の年収

(厚生労働省:平成27年賃金構造基本統計調査

ただし、給料の評価対象となる経験年数は、看護師としての経験年数に一致しません。
転職により職場が変わると、経験年数を5割~8割に換算するところが多く、なかにはまったく評価しないところもあります。

(*転職による看護師の給与については4-3-*参照)
(詳しくは、日本看護協会 看護職の賃金の実態「中途採用者の賃金処遇」で解説されています。)

看護師の給与モデルケース1

2-3-2. モデルケース

新卒、5年目、10年目、20年目の看護師をモデルケースに、年代ごとの給料の特徴を解説します。

新卒看護師のケースでは、基本給に加え、時間外手当と夜勤手当が支給されています。さらに住居の賃貸料補助としての住宅手当、看護師資格手当(20,000円)と通勤手当(6,000円)がその他の手当てとして支給されています。

社会保険料と税金が控除されていますが、新卒で前年度の収入がないため住民税の控除はありません。
ボーナスは病院の規定では3.8か月分ですが、初年度には夏季賞与はなく、年末に1.9か月分支給されています。

看護師の給与モデルケース2

5年目になると基本給が昇給しています。同じく時間外手当と夜勤手当が支給されていますが、5年目として任される仕事も増え、時間外勤務や夜勤の回数が新卒時に比べ多くなっています。

徒歩圏内に居住しているため、通勤手当はなく、住宅手当と看護師資格手当(20,000円)が支給されています。ボーナスは病院の規定で3.8ヵ月分支給されています。

看護師の給与モデルケース3

10年目になるとさらに基本給は昇給しますが、昇給の幅は小さくなっています。
結婚し家族名義の持ち家に居住しているため、住宅手当は支給されていません。看護師資格手当と通勤手当が支給され、ボーナスも3.8か月分支給されています。

看護師の給与モデルケース4

20年目の病棟師長になると、さらに基本給が昇給しています。夜勤はなく、管理職には時間外手当が支給されない規定により、支給されていません。

持ち家の住宅ローンの補助としての住居手当と、離婚後ひとり娘を扶養しているため、家族手当が支給されています。看護師資格手当と管理職手当(50,000円)が支給され、ボーナスも同じく3.8ヵ月分支給されています。

2-3-3. 看護師の収入以外の「福利厚生」について

看護師の収入は給料やボーナスによる所得だけでなく、待遇によっても差が生じることがあります。
看護師寮や住宅の借り上げ、割安の院内託児所の設置や職員・家族の診療費の補助などの福利厚生が充実していることは、相対的な収入増につながっています。

2-3-4. 看護師の退職金は

退職金は、退職者に支払われる手当ですが、法的に義務付けられた制度ではありません。
退職金制度の有無や支給の条件、計算方法などは、病院や施設ごとに就業規則によって定められており、規模の小さな病院(クリニック)などでは、退職金制度がない場合もあります。

一般的には、勤続年数3年以上から支給され、基本給に勤続年数または、病院ごとに定められた勤続年数による係数を乗じる計算方法が用いられています。

<退職金計算の一例>
・5年勤続で退職する場合
(基本給×勤続年数の場合) 242,000円(基本給)×5=1,210,000円
(基本給×勤続年数によって定められた係数の場合) 242,000円(基本給)×3.8=919,600円

2-3-5. 看護師の公務員の給料

国(* )や県、市立の病院で勤務する看護師は公務員であり、その給料は人事院が定める「医療職俸給表(三)」に基づいています。

医療職俸給表は、職務の級と号俸によって構成された表で、役職や経験年数によって基本給が定められています。

(参照:日本看護協会:国家公務員看護師等俸給表

この「医療職俸給表」を給与表として採用している公益法人や医療法人、その他の民間病院もあります。
(*国立病院機構は独立行政法人へ移行したため、国立病院機構で勤務する看護師は公務員ではありません)

2-3-6. 准看護師の給料・年収

准看護師の給料・年収は、看護師に比べると低くなっています。

<表5 看護師と准看護師の平均給与と年収>

  条件(調査対象の全平均) 平均給与 年収
看護師 女性 38.5歳 勤続年数7.9年 328,600 4,774,900
准看護師 女性 49.0歳 勤続年数10.9年 275,900 3,947,700

(厚生労働省:平成27年賃金構造基本統計調査

資格に応じて設定される基本給と資格手当が低いことに加え、准看護師の就業先が大規模病院よりも、小規模のクリニックや施設に多いことが給料の差に表れています。

3. 看護師の非正規雇用(アルバイト、派遣)の時給・月収

看護師の働き方は正規雇用(正社員)だけでなく、パートやアルバイト、派遣など多様な働き方があります。
この章では、アルバイトやパート、派遣などの時給や・月収について解説します。

3‐1. アルバイト・パートの時給、月収

看護師の多様な働き方のひとつに、パートやアルバイトなどの短時間労働があります。
パートやアルバイトの場合、時給が定められており、現在の平均時給はおよそ1,600円です。(1日5時間/週4日で月収換算すると128,000円)

さらに地域や業態(就業場所)による平均賃金の幅があります。
正規雇用と同様に、地方よりも都市部のほうが平均時給は高くなっています(平均150~200円差)。

また、訪問看護はほかの就業先(病院、クリニック、介護系)よりも高い傾向にあります。(平均200円差)
(看護roo:ナースなワタシのお給料

3‐2. 派遣の時給、月収(フルタイム派遣、単発派遣など)

看護師の派遣としての働き方には、病院や老人ホームへのフルタイム派遣と、介護系や健診、イベントなどの単発派遣があります。フルタイム派遣の場合の平均時給1,700~2,400円程度で、夜勤専属の場合はこれより高くなっています。

パートやアルバイトと比べると任される仕事も多く、夜勤がある場合も多いことから、派遣の平均時給は高くなっています。

また、単発派遣の平均時給は、介護系や健診機関では1,500~2,000円とパートやアルバイトとほぼ変わらず、イベントの場合は地域やイベントの種類、働く時間によって1日当たり6,000円~20,000円と幅があります。

4. 看護師が収入をアップさせる方法は?

看護師の給料は働く場所や病院の規模、看護師としての経験年数などでおおむね決まっています。
この章では、その収入をアップさせる方法と注意点について解説します。

4-1. 資格取得、勉強

看護師の給料は、経験年数や役職によって定められた基本給と諸手当から成っています。
経験年数や役職が同じ看護師であれば、基本的には同じ給料であり、給料には看護師の能力は反映されにいしくみといえます。

そのようなしくみのなかで収入をアップさせる方法のひとつが、専門資格を持つことです。

専門看護師や認定看護師の資格を持ち、専門的な看護を提供すると、その評価として、給与表の等級や号俸が上がったり、手当が支給される場合がります。

このほか、栄養サポートチーム専門療法士(NST専門療法士)や糖尿病療養指導士、呼吸療法認定士、介護支援専門員(ケアマネージャー)などの専門資格もあります。

しかし、こうした専門資格に対する評価はまだまだ限定的で、看護協会の調査によると、専門看護師、認定看護師に対して給与表上の評価や手当を支給しているところは3~4割にとどまっています。

手当を支給している病院で最も高い者の手当の平均額は、専門看護師で10,832円、認定看護師9,773円(いずれも月額)となっています。

(詳しくは、日本看護協会 看護職の賃金の実態「専門性の高い看護師の賃金処遇」で解説されています。

4-2. 管理職へ昇進

管理職に昇進すると、給与表の等級が上がり基本給は高くなり、さらに管理職手当が支給されます。
平均的な管理職手当(月額)は、主任で10,000~20,000円、看護師長で40,000~80,000円、看護部長で80,000~120,000円となっています。

しかし多くの病院や施設では、管理職になると時間外手当が支給されなくなります。また夜勤もなく夜勤手当が支給されなくなることから、場合によっては年収が下がってしまうこともあります。

4-3. 訪問看護や高収入な職場への転職

一般的に給料が高いといわれる職場は、訪問看護や美容外科、病院の手術室や透析室です。

・訪問看護

平均年収4,381,149円 正看護師、経験年数問わず (看護roo:ナースなワタシのお給料
高齢化が進むなか、国は在宅医療を推進しており、その看護の担い手である訪問看護師の需要は急速に増えています。

より多くの訪問看護師を雇用するために、給料や労働条件が良くなる傾向にあり、給料・年収は高くなっています。

・美容外科/美容クリニック

平均年収4,349,497円 正看護師 経験年数問わず(同)

美容外科は病院と異なり、保険診療ではない自由診療を行っています。診療費を自由に設定できることで高い収益をあげる病院もあります。美容外科の看護師の給料には、こうした病院の高収益が反映されています。

しかし、美容外科の看護師の給料は、基本給は安く、病院の業績によって支給されるインセンティブ(報酬金)によって高くなっています。またノルマがあるところもあり、一般的な病院の給料のしくみとは大きな違いがあります。

・手術室/透析室

手術室 平均年収4,577,756円/透析室 平均年収4,447,812円 いずれも正看護師 経験年数問わず (同)
手術室や透析室の看護師の給料は、基本給は病棟勤務の看護師と変わりはありませんが、手術手当、オンコール手当、透析手当などの手当てがあります。

このため手術室や透析室は、夜勤のない職場の割には給料が高い職場となっています。

*転職すると経験年数がリセットされる場合も

転職は看護師が収入をアップするためのひとつの方法です。
しかし、安易な転職により収入が下がってしまうケースも多くあります。

看護師の給料は経験年数によって増加していきます。しかし看護師が転職する場合には、この経験年数がそのまま換算されるものではありません。

例えば経験年数10年の看護師の場合も、8年あるいは5年と換算される場合があります。
また再就職した看護師に対する調査では、自分の経験年数がどのように評価されたか分からないと回答する人も多く、評価の情報が開示されていない実態もあります。

<グラフ7 経験年数に対する給料の評価(再就職した看護師が受けた評価)>

経験年数に対する給料の評価

(日本看護協会:平成24年度都道府県ナースセンターによる看護職の再就業実態調査

・一般的に給料が下がる転職のパターン

大規模病院→小規模病院、公的病院→民間病院の転職は、基本給の設定が低くなり、基本給をもとに算出される手当や賞与も低くなります。

また病院→クリニック、病院→施設といった転職でも基本給は下がり、業態が異なることにより、経験年数が評価されない場合があります。福利厚生の充実度も劣り、退職金制度がないところもあります。

・キャリアや収入アップを目指すなら転職支援サービスを活用する
キャリアアップや収入アップを目指す場合には、看護師に特化した民間の転職支援サービスの活用がおすすめです。プロのカウンセラーがあなたのキャリアのアドバイスや、収入アップの交渉を行ってくれます。
看護師の転職支援サービスや求人サイトについては、看護師転職求人サイト比較ランキング。口コミ・評判で人気なのは?でご紹介しています。

4-4. 単発派遣などの副業

収入をアップする方法のひとつに単発派遣による副業があります。
巡回健診、巡回入浴サービス、デイサービスなどの日勤では、平均時給は1,600~1,800円程度、老人ホームなどでの単発夜勤(17:00~翌10:00)では、1回につき20,000~30,000円となっています。

・副業として行う場合の注意点

国公立の病院に勤務する看護師は公務員なので、副業は法律により禁止されていて違反すると罰則があります。単発派遣などの副業はできないと考えた方がよいでしょう。

また法人や民間の病院でも看護師の副業を就業規則で禁止しているところもあります。看護師が副業を行ううえでは、「副業禁止」の確認が必要です。

副業が禁止されていない場合でも、疲労や睡眠不足によって本業への悪影響が出ないよう注意が必要です。
また副業の収入は確定申告が必要なことを心得ておきましょう。

・単発の看護師派遣を行う派遣会社

単発で看護師派遣を行う代表的な派遣会社には以下があります。
MC─ナースネット
看護roo!派遣サービス

看護師の派遣会社については看護師派遣会社の比較ランキング|口コミ・評判でも紹介しています。

まとめ

看護師の多様な働きかたと給料について解説してきましたが、いかがでしたか?
看護師の平均年収は477万円(38.5歳)で、他の医療職や産業と比べても高いものです。

看護師の給料は、新卒から400万近くと高く始まり、20代後半までに昇給のピークを迎え、その後の昇給伸びは穏やかになります。看護師としての経験年数や働く場によっても、給料に差がみられ、規模の大きい病院や看護師需要のある訪問看護、夜勤のある職場などで給料が高い傾向にあります。

今回参照した調査データの傾向は、大規模の病院で働き続けることが高い給料を得ることにつながること示していますが、高齢化社会のなかで看護師に期待される働き方はこれだけではありません。

高齢者施設や訪問看護では看護師需要の高まりに伴って給料や労働条件が良くなり、短時間就労や単発派遣などの働き方が可能になっています。その反面、看護師の経験や能力が給料に反映されにくいので、経験年数が評価されない転職により収入が下がるケースもあります。

これから看護師を目指す方や転職をお考えの現役看護師の方にとって、看護師の給料・年収の様々な実態がお役に立てれば幸いです。

参考サイト
日本看護協会 看護師賃金の実態<PDF>
日本看護協会 協会ニュース 病院で働く看護職の賃金のあり方に関する考え方(案)」<PDF>

参考文献
角田由佳 2007年 「看護師の働き方を経済学から読み解く」 医学書院

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記事更新日:2019年03月09日

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