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記事更新日:2017年03月16日

医療について関心がある人もそうでない人も、「リハビリ」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。治療やケガの後、からだの回復をお手伝いする専門者。それが理学療法士です。

理学療法士は英語で「Physical therapist(フィジカル・セラピスト)」もしくは「Physiotherapist(フィジオセラピスト)」といいます。そのためPTと略してよばれることもあります。

英語をそのまま日本語にすれば身体の治療者となりますが、理学療法士の職域は年々広がっています。単に仕事内容といっても、働く場所によってやるべき業務が違ってきます。
今回は理学療法士に求められる仕事内容と役割を職域に分けて詳しくご紹介します。

1.理学療法士ってどんな仕事?

ここでは、理学療法士の一般的な仕事内容をみておきます。働く場所や職域が変わったとしても基本的に求められる業務です。理学療法士として心得ておかなければならないベースとなるお仕事の内容となります。

1-1.からだの回復「リハビリ」を担うスペシャリスト

リハビリとはリハビリテーションの略です。「もとの状態に戻すこと」という意味のラテン語に由来する言葉です。
病気やケガからの回復、あるいは後遺症として障害が残ってしまった場合に、からだの回復を促すのが理学療法士の大きな役割となります。

病気やケガは、身体の問題だけでなく、心にも問題を抱えることが多いものです。そのため、リハビリでは手先や知識といった技術だけでなく、患者さんや他職種とのコミュニケーション力というのも大切なお仕事の要素となります。

理学療法士の役割には、病気やケガからの回復をサポートするというのが重要な役目ですが、実際の現場で十分な役割を果たすためには、心身のどちらにも精通した知識と実践力が求められるということを心に留めておく必要があります。

1-2.動作のプロ。うごきの専門家

理学療法士の仕事は心身の両方にまたがることです。ですが厳密にいえば、「座る」「立つ」「歩く」といった「人間の基本的な動作」に関わることになります。

手足のうごき、全身の動作を治療することで、身体の回復や維持、あるいは障害の悪化の予防に努めなければなりません。そのため理学療法士は「運動機能のプロフェッショナル」と形容されます。

1-3.理学療法士の仕事内容は大きく分けると3つの役割をもつ

理学療法士は動作のプロフェッショナル。「座る」「立つ」「歩く」といった身体の基本的な動作をサポートすることが専門領域となります。

まずはリハビリの計画をつくることからはじまります。患者さん、ご家族、医師、看護師、理学療法士以外のリハビリ専門職(作業療法士や言語聴覚士)、ソーシャルワーカー、介護スタッフなどを交えて基本の計画が作成されます。

実際のリハビリは理学療法士が単独で行うのではなく、基本的な動作の回復を理学療法士が担当し、食事などの応用動作、言葉のリハビリなどは作業療法士や言語聴覚士などの専門者によって行われるなど分業して実施される場合が一般的です。

しかし、このような分業は病院、施設によっても明確に分けられていたり、ある程度オーバーラップしたりと働く場所によって違ってくるので一概には決められないこともあります。明確に分業されている病院であれば、理学療法士は基本的な動作の回復にフォーカスし、筋力トレーニングやストレッチなど動きを利用した運動療法を中心とした治療を行います。

また痛みなどがあるときには、電気や温熱などの専用の治療器具を使った物理療法などを補助的な治療手段として用いる場合もあります。
この運動療法と物理療法は理学療法士が用いる治療手段として大きな2本柱といってもいいものです。

治療の効果をきちんと出すため、あるいは運動療法や物理療法によって症状が悪化したりすることのないように、身体の構造(解剖学・生理学など)を熟知したうえでリハビリの計画に沿った治療にあたらなければなりません。
また治療をスムーズに進めるために欠かせない患者さんとの信頼づくり。このためにはコミュニケーションの技術といったものも必要となります。

これらの治療手段は理学療法士の基本的な技術となります。ここでさらに理学療法士の業務内容を治療の目的という視点から、「治療後の回復促進」「保存療法」「身体機能の維持」という3つに分類してみていきます。

1-4.「治療からの回復を促す」という役割

医師などが主体となって行う治療に、手術や応急処置など、病気の原因に対して直接治療する医学的な手段があります。しかし手術などは身体にとって負担となる治療という面があります。

理学療法士は、それに対して運動や物理療法などを行い、早期の回復を促すという役割があります。そのためには、理学療法士の専門技術だけでなく、どういった手術が行われたのかなど、手術治療に関する知識も必要となります。

1-5.「保存治療」としての役割

「保存治療(ほぞんちりょう)」というのは聞きなれない人もいるかと思います。
一般に保存療法は手術に対して用いる言葉です。つまり「手術しない治療」と言い換えることができます。手術を専門としている医師であっても、できるだけ手術をしないで良い方法を検討します。それはどんなに安全な手術であっても身体への負担が軽いものではなく、危険性もゼロではないからです。そこで手術をしないで治療することがあります。それが保存療法です。

たとえば骨折しても固定だけで治ることができれば手術はせずに自然治癒を期待します。ですが固定されると筋肉は衰え、関節が硬くなってしまいます。それを防ぐために、筋力トレーニング、関節の運動などを行います。ここで身体面、運動面の知識が生かされることになります。

1-6.「身体の状態維持させる」という役割

身体の回復を促すのが理学療法士に求められる大きな役割です。しかし、求められるのは「回復や改善」だけではありません。「身体の機能を維持させる」というのも大切な視点となります。

人間は年をとれば、自然に筋力は衰えていきます。これが身体の老化です。ある意味では自然の摂理ですが、専門的な知識をもって、運動の計画を作成して実践することで、身体の良好な状態をできる限り維持させることに努めることも重要です。

「歩けていた人が加齢で歩けなくなる」「座りっぱなしの人が徐々に寝たきりになっていく」。
こういったことを予防し、健康に健やかな日々を送ってもらえるように今の身体の能力を維持させていくことも理学療法士の役割になります。

日本は今、5人に1人は65歳以上という高齢社会です。そのなかで、理学療法士が活躍する意味が大きくなりつつあります。

2.職域拡大中の理学療法士。活躍する場所はさまざま

ほんの10数年前まで理学療法士は不足しているといわれていました。しかし現在は全国にたくさんの理学療法士を養成する教育機関があります。

日本理学療法士協会の資料によると理学療法士の数は約13万人近くになり、毎年1万人以上の理学療法士が誕生しています。

理学療法士の数は約13万人近くになり、毎年1万人以上の理学療法士が誕生

※資料:日本理学療法士協会・医療従事者の需給に関する検討会・第1回 理学療法士・作業療法士需給分科会・理学療法士を取り巻く状況についてより

理学療法士として活躍する人たちが増えるなか、職域は医療という枠を超えて拡大しつづけています。仕事内容について知るうえで、現在理学療法士が活躍している職域をみておくことが参考になります。それは、それぞれの職域において理学療法士の業務もどんどん多様化しているからです。

理学療法士の就業先別データ

※資料:日本理学療法士協会・医療従事者の需給に関する検討会・第1回 理学療法士・作業療法士需給分科会・理学療法士を取り巻く状況についてより

3.理学療法士の具体的な仕事内容を職場別にもっと詳しく

ここでは、理学療法士の仕事内容を職場別に詳しくみていきます。活躍する職場としては「医療施設」「介護可憐施設」「福祉系施設」「行政機関」「スポーツ・フィットネス業界」「教育・研究・開発期間」などがあります。

3-1.医療施設

理学療法士が活躍する代表的な職場といえば医療機関です。病院にもいくつかの種類があります。急性期病院、回復期病院などです。

急性期病院では、病気の状態がまだ重いので、リハビリによる「危険性(リスク)」というものへの知識が必要となります。
患者さんの回転率(入退院数の入れ替わり)が高く、施設によっては、ほぼ毎日新規の患者さんを担当することになります。急性期という性質から入院期間は短いため、安全面を優先しつつも、「リハビリの効果」が求められます。
そのため運動の量に対して十分な配慮をし、検査データといった詳細な情報なども頭に入れておかなければなりません。
これに加えて、回復を見通して患者さんの病気、合併症、家族構成、社会的立場といった多くの情報を収集しておくことで退院後の目標を定めておく必要があります。

さらに病気やケガを発症したばかりの急性期には、患者さん・ご家族にとって最も混乱し、不安を抱いている時期でもあります。そういった感情にも配慮できる心配りも必要となってきます。

回復期病院では、急性期を終えて社会に復帰するまでの期間リハビリに専念する病院です。急性期では初期の治療の意味合いが強いですが、回復期病院はリハビリに特化した病院といえます。
そのため、たくさんの理学療法士がいる病院も多く、なかには100名以上のリハビリ専門職が集まる場所もあります。一人の患者さんに関わる時間も長く、その分質の高いリハビリが求められます。

身体の機能だけでなく、生活を見据えたリハビリを実施しなければならず、入浴、トイレ動作、復帰後の仕事で求められる能力の回復など、患者さんの治療に対してより具体的な関わりが必要となります。
必要に応じて自宅の環境を調査、福祉器具の必要性を検討、退院後に介護サービスなどが必要かなどの検討も行います。多くの専門職者との共同作業が必要となります。

3-2.介護関連施設

介護関連施設には、老人保健施設、特別養護老人ホームなどの施設系サービス。在宅での介護をサポートする在宅系サービスなどがあります。

施設系サービスでは、急性期・回復期といった病院でのリハビリを終えたものの、自宅への復帰が難しい場合に利用されるという特徴があります。
身体の機能を急速に回復させることよりも、今の生活を維持あるいは緩やかに改善させていくことを目指します。

病院のようにマンツーマンで患者さんに関わることができないことも少なくありません。一度のリハビリで多くの人たちが参加できる集団型の運動プランなどを計画したり、介護スタットの協力を得てリハビリを行うことが多くなります。

在宅系サービスでは地域で生活しながら介護施設に通ってくる方々に運動やレクリエーションなどを通じて身体の機能の維持、病気やケガの予防、そして精神面での活性化などを目指していきます。
また自宅で療養中の患者さんに対して、訪問して家でリハビリを行う訪問サービスも年々増加しています。

3-3.福祉系施設

福祉系施設には児童福祉施設、身体障害者施設などがあります。児童福祉施設は週に数回通ってリハビリを受けるというタイプが多いです。

理学療法士も少なく、1人職場であることも珍しくありません。発達に問題のある子供に対して「正常な発達過程をたどって機能面を維持・向上させる」ということが目標となります。

正常な発達過程でみられる「首の座り」「寝返りをする」「お座りをする」という当たり前の過程には、それぞれ生まれ持った神経・筋肉の反射や反応などが大きく関わっています。
その反射や反応を利用した治療方法を利用して発達のサポートをします。子供のリハビリには、さらに専門的な知識が求められます。

身体障害者施設では入所している人・通所する人のそれぞれのニーズに合わせたリハビリ提供が必要となります。身体的なリハビリが必要なケースもありますが、ある程度日常動作が自立している利用者も多いため、職業復帰などより高い目標をもつ方が多いという特徴があります。
障害とうまく付き合いながら社会復帰していけるように応用動作の練習や職業訓練など、身体面を超えた関わりが強く求められます。

3-4.行政機関

ここでいう行政機関とは、市町村の役所、保健所などを指しています。
病院などの理学療法士業務と同様に公的期間での病院で業務をする理学療法士もいます。地域の保健福祉の窓口業務、地域の福祉プランの作成などに携わる仕事です。
また政治家として活躍する理学療法士もいます。

3-5.スポーツ・フィットネス業界

スポーツ、フィットネスなどの業界で活躍する理学療法士もいます。こういった分野は募集が少なく、さらに人気が高いことから「狭き門」といわれる職域です。
高校や大学のクラブチームで業務に携わる人もいれば、プロのスポーツチームの専属トレーナーとして活動している理学療法士もいます。

身体の構造、動作の解析能力、スポーツ障害といった基本的知識に加えて、関わるスポーツの特性などについても深い知識をつけなければいけません。選手の身体をサポートし、パフォーマンスを向上させるトレーニングの考案、ケガの予防・回復などの指導を行ったりします。

3-6.研究・教育・開発機関

大学をはじめとする研究期間に属して研究する理学療法士も少なくありません。大学をはじめとする教育期間でなどで教鞭をとりながら、教育と研究に研鑽することになります。

少子高齢化を広くとらえる研究から細胞レベルの研究まで対象は幅広く、日々知識の習得が求められ、論文発表などの機会も多くなります。
また同時に教育に関わる理学療法士が多く、将来の理学療法士を育成するという大きな使命を担っています。開発期間では、持ち前の動作解析能力や身体に対する知識を生かして介護機器の開発に携わるケースなどもみられるようになりました。
最近ではロボットスーツといった介護機器などもリハビリ機器として注目を集めていて、そこには多くの理学療法士が関わっています。

まとめ:理学療法士の仕事は年々多様化傾向

理学療法士の数が増えるなかで、次々に新しい領域に挑戦しようと意欲の高い人たちも増えています。

以前は病院で働くのが当たり前といわれていた時代もありましたが、近年は訪問系のリハビリ、保険を使わずに自費診療によるサービスを提供する理学療法士もみられるようになっています。

海外では開業権を持ち、独自に理学療法士がクリニックを開設し、必要によっては一部の薬を処方できる国もあります。海外の理学療法を学び日本に持ち帰ろうとする療法士も少なくありません。
日本の理学療法士も職域を拡大しようと日々努力していて、さらに高齢化から理学療法士に対するニーズも高いことより、今後はさらに仕事内容が多様化してくるかもしれません。

参考文献
公益社団法人 日本理学療法士協会 理学療法士ガイド
社団法人 日本リハビリテーション医学会 リハニュースNo.45
公益社団法人 日本理学療法士協会 日本理学療法士 三木貴弘部員の豪州理学療法コラム
World Confederation for Physical Therapyホームページ
一般社団法人日本作業療法士協会・「行政の理学療法士、作業療法士が関与する効果的な事業展開に関する研究」
公益社団法人 日本理学療法士協会 医療従事者の需給に関する検討会 第1回 理学療法士・作業療法士需給分科会資料

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