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記事更新日:2017年04月19日

看護師長とは、看護単位の運営や看護師の教育、労務管理を担う看護管理職です。
看護師長には病棟などの一部門を率いていくリーダーシップが求められます。
看護師長の仕事は、責任やストレスが大きい反面、やりがいのある仕事です。

この記事では、看護師長の仕事や必要とされる能力について、さらには看護師長になるための方法、転職・求人について詳しく解説します。

1. 看護師長とは

看護師長とは病院の「看護単位」の長です。
看護単位とは、病院の看護担当の一区域を指し 「病棟」とほぼ同義語です。

「外来」「手術室」「集中治療室」なども一つの看護単位です。

看護師長は、病院組織のなかの「管理職」に位置付けられています。
看護単位が複数ある大きな組織(病院)では、看護師長の上に看護部全体を取りまとめる看護部長がいます。

院長(医師)-看護部長-副看護部長-看護師長-主任看護師-看護師

看護単位が1つしかない組織(クリニック・介護施設)では、看護師長が看護部のトップです。

院長(医師)-看護師長-看護師

看護師長の平均年齢は46歳、看護師経験年数に換算すると、およそ24年となっています。

(参考:日本看護協会 2012年病院勤務の看護職の賃金に関する調査

2. 看護師長の役割、仕事

看護師長の役割や仕事内容とはどのようなものでしょうか?
この章では、看護師長に必要な能力やスキルと看護師長の仕事について解説します。

2-1. 看護師長に必要な能力・スキル

看護師長に必要な能力は「リーダーシップ能力」です。
次の図は、米国の経営学者ロバート・カッツが提唱した「カッツ・モデル」に基づいて、看護管理職のリーダーシップ能力を図示したものです。

看護管理職のリーダーシップ能力

リーダーシップ能力は、「専門的能力」「対人的能力」「概念化能力」の3つに分類されます。
看護師長はこの3つの能力を図のようにバランスよく備えていることが求められます。

2-1-1. 専門的能力

看護師長に必要な「専門的能力」とは、看護単位全体で、効果的で効率的な質の高い看護を提供する能力です。看護師としての専門的な技術や知識は、直接の患者ケア以外にも看護スタッフへの実技教育、研究支援において必要です。

また効果的で効率的な看護提供には、医療制度や診療報酬制度に関する知識、理解が必要です。

2-1-2. 対人的能力

看護師長に必要な「対人的能力」とは、看護単位全体および関係部門との調整をはかり、最適な対人関係を築いていく能力です。

看護師長には医師や他部門との調整役として、コミュニケーション力や交渉力が必要です。
スタッフ看護師への指導力やストレスマネジメント力のほか、看護の判断の普遍的な基準となる倫理観を備えておくことが必要です。

2-1-3. 概念化能力

看護師長に必要な「概念化能力」とは、看護単位での事態や物事の関係性を見極めて、問題の本質を示し、問題解決に向けて指揮・統制する能力です。

看護師長は病院全体、看護部門全体の方針や計画を受けて、看護単位の方針を決定、計画します。そのために論理的思考や問題解決思考を備えておくことが必要です。

2-2. 看護師長の仕事内容

看護師長の仕事は「看護単位の運営」「看護師の教育」「労務管理」「病院全体としての活動への参画」があります。

2-2-1. 病院、看護部門の業務計画に基づいた看護単位の運営

看護師長は、病院全体や看護部門の業務計画を受けて看護単位の運営を行います。
看護師長は管理業務だけでなく、直接の患者ケアや家族への対応も行います。

目標管理 看護単位の年間目標、計画の作成 評価
看護の提供 患者、家族ケア、医療事故防止、感染管理、シフト調整
関連部門との調整 医師や関連部門との連絡、交渉、調整
業務改善 カンファレンスや看護単位での会議の運営

2-2-2. 看護師の教育、育成、採用

看護師長は、看護スタッフの教育、育成を行います。権限がある場合には人事や採用にも携わります。

看護師の教育、育成 キャリアラダーに沿った教育、個人面談、実技指導、研修のプランニング、研究支援、人事考課
看護師の人事・採用 (看護師長に看護師人事、採用に関わる権限がある場合)
勤務異動の決定、新規採用の書類選考、面接

2-2-3. 看護師の労務管理

看護師長は、看護スタッフの勤務表の作成や労働時間の管理、健康管理、職場環境の管理を行います。

勤怠管理 勤務表の作成、管理日誌の作成
時間外勤務の申請(看護部→総務課)
看護スタッフの健康管理 看護スタッフの体調の把握、医薬品や医療材料の適切使用の管理、
メンタルヘルス、暴力、ハラスメント対策

2-2-4. 病院全体の目標、計画への参画

看護師長は、病院全体の目標や計画に参画し、活動を行います。

病院全体の目標、計画への参画 病院全体の会議への参加、委員会活動の実施
職員向け研修の計画、実施
保健所医療監視の対応

3. 看護師長の実情

この章では、看護師長の給料や働き方、仕事の魅力や悩みについて説明します。
看護師長は、基本給が高く、役職手当が支給されます。

看護師長の勤務は、平日日勤のみですが、時間外労働が多く、時間外手当が支給されないケースもあります。
看護師長の仕事は自律性があり、やりがいもある一方、仕事の重責や人間関係のストレスなどの悩みを抱えやすい仕事です。

3-1. 看護師長の給料・年収

日本看護協会の調査では、看護師長の給料は非管理職(スタッフ・正規雇用)と比べ、月額基本給で7万円、年収では165万円ほど高くなっています。

基本給(月額) 年収
看護師長 322,686円(平均46.5歳) 6,483,444円(平均45.5歳)
非管理職 254,583円(平均36.1歳) 5,192,417円(平均35.0歳)

(参考:日本看護協会 2012年病院勤務の看護職の賃金に関する調査

看護師長と非管理職の給与差は、「看護師長のほうが年齢が高い」「看護師長のほうが経験年数が長い」「看護師長には役職手当が支給される」ことによります。

3-1-1. 看護師長の役職手当(管理職手当)とは

役職手当(管理職手当)とは、看護師長の職務に対して支給される手当です。

役職手当は「一律定額」または「基本給の○%」という算出方法があり、支給額は病院によってさまざまで、月額およそ10,000円~80,000円と大きな幅があります。

3-1-2. 看護師長には時間外手当は支給されない?

日本看護協会の調査では、約半数(40.3%)の病院で看護師長には時間外手当が支給されていません。

一般的には「看護師長は管理職なので時間外手当は支給されない」と考えられていますが、看護師長は与えられた権限が限定的で、多くの事項について院長や看護部長の判断や指示を必要とする立場です。

こうした立場は労働基準法上、時間外手当の支給の必要がない「管理監督者」にはあたらず、日本看護協会は処遇適正化の上では、看護師長の時間外手当は「支払われるべき」という見解を示しています。

(参考:日本看護協会 看護協会ニュース「看護職の賃金 処遇の現状と改善に向けたポイント」)

看護師の給料について詳しくは、『看護師の給料・年収【完全ガイド】収入の実態を徹底解説します。』をご参照ください。

3-2. 看護師長の働き方

看護師長の働き方には、次のような特徴があります。

3-2-1. 夜勤がない

看護師長は日勤帯の勤務がおもで、夜勤業務はありません。
しかし、病院によっては看護師長が交代で管理夜勤を行うところもあります。

また、夜勤帯で起こる不測の事態(事故、スタッフの急病など)にも対応できるよう、交代でオンコール体制をとるところもあります。

3-2-2. 平日の勤務が多い

看護師長は平日の勤務が中心ですが、看護師長が交代で土日祝日の勤務(管理業務)をするところもあります。この場合は、平日のいずれかに代休をとります。

3-2-3. 時間外勤務が多い

看護師長は、スタッフ看護師の仕事の状況を確認し、必要に応じて時間外勤務の指示、監督を行います。また、病院の会議、患者家族との面談、クレーム対応などの業務を、通常の勤務時間外に行うことがあります。

日本看護協会の調査では、看護師長の時間外勤務時間数は平均28.2時間/月で、スタッフ看護師よりも長くなっています。

(参考:日本看護協会 協会ニュース「今すぐ見直そう 長時間の時間外勤務

3-3. 看護師長の仕事の魅力・悩み

看護師長の仕事は達成感や充実感という魅力があり、その一方で仕事の重責やストレスがあります。

3-3-1. 看護師長の仕事の魅力、やりがい

看護師長の仕事は、大きな達成感や充実感がある仕事です。
看護師長はある程度の権限が与えられており、主体的に取り組む仕事が多くあります。

看護単位全体の看護の質の向上、働きやすさ、スタッフの成長のために、自分の考えをもって仕事をし、周囲の信頼を得ながら目標を達成していくことが、看護師長の仕事のやりがいです。

3-3-2. 看護師長の悩み

看護師長は、組織の中では中間管理職に位置し、院長や看護部長などの上層部と現場のスタッフ看護師との板ばさみになることがあります

看護単位の長として、課題やクレームへの対処を求められることも多く、ストレスを抱えやすい立場です。
また看護師長の経験が浅いうちは、スタッフ看護師を指導教育する立場として、自身の経験や実力が足りないと悩むことがあります。

3-4. 看護師長のキャリア

看護師長のキャリアには次のような特徴があります

3-4-1. 看護管理者としてキャリアアップし看護部長を目指す

看護師長は看護管理職としてキャリアアップし、看護部長へ昇進することができます。
日本看護協会の「認定看護管理者」は、看護師長から看護部長を目指すために有利になる資格です。認定看護管理者では看護管理の専門知識やスキルを磨きます。

◆認定看護管理者

資格要件 看護師の免許取得後、実務経験が通算5年以上あること。
下記のいずれかの要件を満たすこと。
要件1:認定看護管理者教育課程サードレベルを修了している者。
要件2:看護系大学院において看護管理を専攻し修士号を取得している者で、修士課程修了後の実務経験が3年以上ある者。
要件3:師長以上の職位で管理経験が3年以上ある者で、看護系大学院において看護管理を専攻し修士号を取得している者。
要件4:師長以上の職位で管理経験が3年以上ある者で、大学院において管理に関連する学問領域の修士号を取得している者。
教育課程 ファーストレベル:150時間
セカンドレベル:180時間
サードレベル:180時間

(参考:日本看護協会 認定看護管理者

大規模病院では、院内での看護管理者研修も行われています。

3-4-2. 看護師長経験を生かして転職する

看護師長経験者は、管理職としての経験や管理能力、リーダーシップを買われて、看護師長や看護部長として採用されることもあります。

3-4-3. 看護師長経験者ゆえに転職が難しい場合もある

看護師長経験者の転職では、「希望給与額が高い」「見合ったポストがない」など、条件面で折り合わないことがあります。

また、スタッフとして転職しようとする場合には、管理職経験があることを「現職の師長やスタッフとの釣り合いがとれない」「仕事内容に不満を抱かれそう」と評価され、敬遠されることもあります。

4. 看護師長になるためには

看護師長はポストが限られており、現職の看護師長が退職または降格しない限りはポストがあくことはありません。しかし一方で、「看護師長になりたい」と思う看護師は少ないという傾向があります。

看護師長になりたい看護師は、どうすればその限られたポストに就くことができるのでしょうか。
この章では看護師長になる方法を解説します。

4-1. 昇進して看護師長になる

一部の医療機関では看護師長になるための昇進試験が行われています。試験がない場合には、現職の看護管理者や病院運営者によって、看護師長への昇進の適否が判断されます。

4-1-1. 看護師長への昇進試験(国立病院機構の場合)

*幹部看護師任用試験

幹部看護任用試験とは、国立病院機構の看護師長や看護部長になるための試験です。
看護師実務経験5年以上に受験資格があり、病院で30時間の研修・筆記試験・面接が行われます。

試験合格者に「副師長」になる資格が与えられ、その後、実績とポストのあきに応じて「看護師長」に昇進します。早い人では30代前半で看護師長になります。

4-1-2. 看護師長への昇進の判断材料とは

看護師の経験年数、自施設での勤続年数、能力評価、勤務態度や人柄などを総合的に判断して、昇進の適否を決めます。

通常は看護師→リーダーナース→主任看護師と段階を経て昇進するため、主任看護師のなかから次の師長が選出されます。

・資格の条件
一般的に、准看護師は看護師長にはなれません。
看護師長は、スタッフ看護師を指揮する立場にあるため、「医師または看護師の指示のもと」で業務を行う准看護師は看護師長にはなれません。

4-2. 管理職としてヘッドハンティングされる

経験を積んだ看護師が管理職としてヘッドハンティングされることがあります。
ヘッドハンティングは、介護施設や新規開業のクリニックの看護責任者(看護師長)が多く、一般病院から同規模の一般病院へのヘッドハンティングは稀です。

このほか、管理職昇格を内定したうえで、一般職で採用される場合があります。

5. 看護師長の転職

看護師長は求人数も少なく、オープンに求人が募集されることはめったにありません。

看護師長経験者はその管理能力が買われる一方、経験や条件によって採用されにくい場合があります。
この章では、看護師長の求人の探し方や、転職の志望動機・自己PRのポイントについて説明します。

5-1. 看護師長の求人の特徴

看護師長の求人には次のような特徴があります。

5-1-1. 看護師長の求人数は少ない

通常看護師長は、自施設の看護師の中から選出します。外部から看護師長として迎えることは稀なため、看護師長の求人は多くはありません。

新規開業のクリニックや正規雇用の看護師が少ない介護施設で、看護師長を募集することがあります。

5-1-2. 看護師長の求人は非公開求人が多い

看護師長の求人は表立って行われることはありません。病院は「看護師長が何らかの理由で退職すること」や、「後任を在職者の中から選出しないこと」の公表を控えます。
このため看護師長の求人は非公開求人が多くなっています。

5-1-3. 看護師長経験がなくても採用されるのか?

看護師長経験がなくても、主任看護師やそれに準じた経験があることを評価され、看護師長として採用されることがあります。

特にクリニックや看護師が少ない介護施設では、管理業務は少なく、スタッフ看護師と同等の働き方がもとめられるため、看護師長経験がなくても看護師長として採用されることがあります。

5-2. 看護師長求人の探し方

看護師長の求人の探し方には次の方法があります。それぞれの特徴を理解しておきましょう。

5-2-1. 民間の転職支援サービスを利用

看護師長の求人を探すためには、「非公開求人」の取り扱いが多い民間の転職支援サービスが有用です。インターネットまたは電話で登録し、看護師長の「非公開求人」の紹介が受けられます。

民間の転職支援サービスは、簡単に多くの情報が得られ、転職に関するアドバイスや面接に日程の調整などのサポートを受けることができます。特に働きながら転職先を探す人には利点のある方法です。

看護師の転職サポート マイナビ看護師
人材業界大手のマイナビグループの運営する看護師向けの転職サービス。大手系の中では看護師の領域に強いのが特徴です。

ナースフル
リクルートグループの運営する看護師向けの転職支援サービスです。中堅の転職支援につよく、キャリアを意識する上では登録しておくべきです。

看護のお仕事
関東や首都圏での看護師の転職に強いです。

5-2-2. 知人の紹介

看護師長の求人の特徴のひとつは、「知り合いの紹介が多いこと」です。
就職希望者がどんな人か分かっていると、病院側は安心して採用することができます。

個人病院では、院長や看護部長が知り合いの看護師に声をかけて、看護師長として採用することがあります。

5-2-3. ハローワーク/看護協会のナースセンター

ハローワークや看護協会のナースセンターなどの公共の職業紹介所にも、看護師長の求人があります。ハローワークには「非公開求人」があり、求職者登録をすることで「非公開求人」の情報を得ることができます。

看護協会のナースセンターには「非公開求人」はないため、看護師長の求人も公開求人となっています。

5-3. 看護師長の転職の志望動機、自己PRのポイント

スタッフ看護師と違い、管理職である看護師長が転職することはそれほど多いことではありません。
転職の際には「看護師長まで務めて、なぜ転職するのか?」と質問されることもあります。

看護師長の職責の重さや人間関係のストレスで転職する場合に、これらの理由をストレートに伝えると、「また同じ問題を抱えることになるのでは?」と思われてしまいます。

職場によって看護師長の仕事や責任の範囲はさまざまであることをふまえて、「管理職としての能力」と「仕事の特性の理解」をPRしましょう。

5-3-1. 看護師長経験で身につけた能力をPRする

看護管理職として求められる能力・スキルをPRしましょう。(2-1「看護師長に必要な能力・スキル」参照)

具体的な事例(「スタッフの育成」や「業務改善」など)を上げて説明すると、看護師長に求められている能力やスキルをどのように理解しているかが、相手に伝わりやすくなります。

5-3-2. 転職先の仕事の特性を理解していることを伝える

看護師長の仕事内容や責任の範囲は、職場によってさまざまです。
特に介護施設や小規模のクリニックでは、「一般のスタッフ業務+管理の仕事」になります。

前の職場の仕事のやり方や能力に固執すると、「扱いにくい」と評価される場合があります。
転職希望先の仕事の特性を理解し、そのうえで看護師長としての経験を生かしたいことをPRしましょう。

まとめ

看護師長の仕事は、看護単位の運営、教育、労務管理を行う仕事で、やりがいがある一方、責任やストレスも大きな仕事です。

看護師長にはリーダーシップ能力が必要で、「専門的能力」「対人的能力」「概念化能力」の3つをバランスよく備えていることが求められます。

看護師長になるためには、自施設で経験を積み、リーダー、主任とステップアップしていく必要があります。
この記事を読んで、看護師長の仕事や必要な能力を理解し、看護師長へのキャリアアップや看護師長の経験を生かした転職に役立てていただければと思います。

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記事更新日:2017年04月19日

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