理学療法士が整形外科(クリニック・病院)に転職するための情報まとめ。仕事事情や求人の探し方まで
整形外科に興味があるけど、今まで無縁だった転職にはなかなか踏み出せない・・・。そう感じる理学療法士の方も多いのではないでしょうか。
そんな理学療法士の方に向けて、不安を解消してもらい、転職への一歩を踏み出すために必要な情報をまとめました。
整形外科の理学療法士の仕事内容や給料、転職のコツまで幅広い情報を紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1. 整形外科の理学療法士の仕事とは?
1-1. 整形外科理学療法士の仕事場
整形外科理学療法士として働く場合は、大きく分けてクリニックや診療所と呼ばれるころと、病院と呼ばれるところがあります。同じ整形外科疾患を扱うとしても、働く場所の特徴や仕事内容がことなります。
まずは、職場の特徴について説明していきます。
1-1-1. クリニックの特徴
クリニックは診療所とも言い、病床がないもしくは病床が19床以下施設を指します。そのため、基本的には外来の患者様に対して治療を行います。
患者様が外来に来る理由としては腰や肩に痛みや関節可動域制限といったいわゆる「機能制限」があるために通院されます。そのため、痛みを緩和したり、関節可動域を改善させたりするような治療が主体となります。
疼痛緩和のための物理療法の機器が充実している施設が多く、理学療法士が直接治療を行わず、ホットパックなどの物理療法だけを行う患者様も来られます。
一人に関わる時間は20分前後であることが多く、病院と比較しても一人の患者様に関わる時間は少なく、その分、1日に多くの人数の患者様を治療することになります。
1-1-2. 病院の特徴
病院は整形外科疾患のため手術や治療が必要で入院している患者様に対して治療を行います。
術後の機能回復に合わせた練習を適宜行っていきます。ADLや社会参加に必要な練習などを行うことで、在宅復帰を目指して治療を行う必要があります。
手術直後の患者様を治療する機会もあるため、リスク管理や離床促進、クリニカルパスに沿った治療を行うことも多いでしょう。
1人の患者様に費やすリハビリの時間は60分前後であることもあり、クリニックでのリハビリの時間と大きく異なります。また、退院前に自宅を訪問したり、環境の調整を行ったりすることもあります。
1-1-3. 番外編(デイケア・訪問リハ)
近年、整形外科の病院やクリニックにデイケアや訪問リハが併設されている場合があります。
対象の整形外科疾患から外れることも多いですが、整形外科の医師が処方箋や指示書を出す場合は整形外科的な指示が多いかもしれません。
近年、在宅医療の推進とともに、介護保険のサービスで理学療法士が働くことは避けられない現状です。
制度が全く異なり、事務作業も大きく違ってくるので、たとえ整形外科の病院やクリニックを希望したとしても併設しているサービスがある場合は、しっかり勉強しておきましょう。
1-2. 整形外科理学療法士の仕事内容
1-2-1. クリニックの場合
クリニックでの仕事内容について詳しく見ていきましょう。
クリニックで治療の対象となる患者様は「痛み」や「可動域制限」といった「機能制限」に対する治療を行うことが多く、20分間という短い時間で、何らかの変化を生じさせなければ、次回以降は来院してくれないこともあります。
そのため、機能制限を回復させるために徒手療法や物理療法を行うことが多いです。
さらに、機能制限の原因となっている動作を改善するための指導や自宅で行える自主トレーニングの指導をする必要があります。1人の患者様に20分という短い時間での治療なので、担当する患者数は病院に比べ多くなります。
事務作業は計画書の作成程度でそれほど多くありませんが、計画書の更新を頻繁にする場合は、それだけ作業が多くなります。
クリニックは診療時間が遅くまであるのが特長です。そのため、理学療法士も病院と比較し、夜遅くまで勤務時間がある所が多いです。その分、休憩時間が2時間ほどある場合が多いです。
1-2-2. 病院の場合
入院での仕事は、在宅復帰を目指す必要があるため、機能回復に加え、日常生活動作や社会参加能力、住環境整備といった、在宅に向けての治療を行う必要があります。
治療の内容からも1人の患者様への治療時間は60分前後と長くなります。
手術直後の場合は、リスク管理をしっかり行いながら、離床を促すところから始める必要があります。そのため、整形外科分野以外でも術後の合併症などの知識が必要になります。
事務作業はクリニックに比べ圧倒的に多いでしょう。計画書はもちろんですが、他院へのリハサマリーやADL評価表、他職種との連携資料など事務作業が多くあります。
また、クリニックに比べ、委員会や会議が多くあります。他職種との連携を直接的に行う機会が多いのも病院での仕事の特長です。
1-3. 整形外科理学療法士に必要な能力
1-3-1. クリニックの場合
短い時間で臨床推論を駆使して、適切な治療方法を選択していきながら、結果を出していく必要があります。もちろん、経験が浅い場合はいきなり最善の策を導き出すことは難しいですが、なるべく適切な治療を行うことで機能制限を少しでも改善することが必要です。
ベストは無理でも常にベターな治療を選択していくために、治療技術に多くの引き出しがあったほうが良いでしょう。
また、多くの患者様を担当するため、気持ちの切り替えや次の行動を常に予測していく力が必要です。場所によっては、20分刻みでのスケジュール管理になるため、スピード感が病院とは異なります。
クリニックの場合は、病院とは違い、患者様の意思でクリニックを選ぶことができます。そのため、接遇態度が非常に大事になります。明るい雰囲気を作ったり、対応が丁寧にできることも必要な能力となるでしょう。
1-3-2. 病院の場合
病院の場合は、治療技術だけでなく、日常生活動作の指導方法や生活環境整備に関する知識が必要です。また、急性期の整形外科の場合は、リスク管理や離床に関する知識や技術が必要になります。
また、クリニックと比べ、直接、他職種と連携をとることが多くなるため、他職種との連携に必要なコミュニケーション能力が求められるでしょう。
2. 整形外科理学療法士の職業事情
2-1. 整形外科理学療法士の収入事情
整形外科理学療法士の収入は施設によって大きく異なります。理学療法士や作業療法の平均年収の推移は厚生労働省の賃金構造基本統計調査を見れば分かります。
平成27年の調査では平均給与28万円、賞与68万円、平均年収405万円となっています。
クリニックでは、施設によって患者数が大きく異なり、人気の整形外科クリニックで理学療法士も多い場合や逆に理学療法士は少なくて、責任者としてリハビリ部門の統括を行うような場合は平均に比べ収入が多くなるでしょう。
病院では、基本的な収入は大きな差はないですが、クリニックに比べ働く理学療法士の人数が多いため、年数を重ねれば、役職なども付きやすく収入アップが図れます。その分、若手のころは低収入の傾向があります。
介護施設などに比べれば、整形外科分野で働くとリハビリを提供した量だけ報酬が得られるので、理学療法士の収入は多い傾向にあります。
2-2. 整形外科理学療法士の休日、有給事情
整形外科はクリニックの場合と病院との場合で休日が異なります、クリニックは日祝休みで、土曜日や平日のどこかで半日である場合が多いです。
そのため、理学療法士の休日も施設の休日に準じて休みになります。つまり週休2日の祝日休みということになります。
それに比べ、病院は週休2日で日曜日以外は病院によって異なる場合が多いです。土日休みもあれば、日曜日と平日のどこかで休むという場合もあるでしょう。
入院されている患者様を対象とすることが多い為、祝日は出勤する場合が多いと思いますが、中には土日祝休みなどという病院もあります。
有給は職員の数が多ければフォローしやすいため取りやすいかと思います。クリニックでも予約制などでやりくりができれば有給を消化しやすいでしょう。
2-3. 理学療法士が整形外科で働くメリット
クリニックと病院とではメリットやデメリットは大きく異なります。ここでも、両方を比較しながら見ていきます。
2-3-1. クリニックの場合
クリニックは良くも悪くも「機能制限」へのアプローチが中心となります。そのため、治療手技を向上させたり、引き出しを増やしたいという場合は非常によい経験をすることができます。
また、事務作業や会議、他職種との直接的な連携が少なく、治療に専念することができることもいいところです。休日は週休2日の祝日休みと多いところも魅力的です。
2-3-2. 病院の場合
整形外科疾患のオペなどを見学できることがあります。そして手術後の回復過程を把握できるのはいい経験になるでしょう。急性期の場合はリスク管理について学ぶ機会にもなるでしょう。
日常生活動作練習や環境整備、退院調整などの幅広い知識を得ることができることもメリットです。他職種との連携を学ぶ機会も多いです。クリニックに比べ、業務終了時間は早いことが多いです。
2-4. 整形外科で働くデメリット
2-4-1. クリニックの場合
機能障害へのアプローチが主になることが多いため、知識が偏ってしまうリスクがあります。
また、1人の患者様にかける時間が短く、多くの担当人数を治療しないといけないため、じっくりと1人の患者様に時間をかけたい方にとっては、ペースを掴みにくいかもしれません。業務終了時間が遅いことが多いのもデメリットと言えるでしょう。
2-4-2. 病院の場合
事務作業や会議が多く、業務終了時間は早くても、病院によっては残業が多いことがあります。
クリニックに比べ、治療以外の仕事が多いので、治療をしっかり経験したい場合にはデメリットに感じるでしょう。他職種との連携も多く、うまく連携ができない場合にはストレスになってしまいます。
3. 理学療法士が整形外科に転職する方法
3-1. 整形外科理学療法士の求人動向
基本的にクリニックの中でも整形外科があるクリニックで理学療法士が配属されることが多いです。そのため、求人は他の診療科に比べて多いです。
病院はクリニックに比べ様々な診療科で理学療法士が活躍しています。そのため、理学療法士がもっとも多く働いている中枢系のリハビリテーション病院に比べると、整形外科の病院では求人は少ないです。
新卒のスタッフに対する求人は比較的多いですが、転職で待遇や希望にあった施設を探すとなると、転職先は多くないので、しっかりと求人情報をチェックしていく必要があります。
3-2. 整形外科理学療法士の求人の探し方
3-2-1. リハビリ職・理学療法士に強い転職支援会社を活用する
整形外科への転職を成功させるには、理学療法士の求人に強い転職支援会社を活用するのも有効です。
病院やクリニックは非公開かつ手間をかけずに転職支援会社を経由して募集することが多いためです。また転職支援会社を活用すれば条件にマッチする求人の紹介が受けられ、書類通過率も高まり、内定を得やすい傾向があります。
コンサルタントは転職する際の希望を聞いて、それに見合った職場を紹介してくれます。また、待遇面などで転職先と交渉をしてくれることもあります。そのため、コンサルタントにしっかりと、自分の転職先への希望を伝えることがポイントです。
理学療法士に強い転職支援会社は以下がおすすめです。
マイナビコメディカル
スマイルSUPPORT介護
メドフィット リハ求人.com
3-2-2. リハビリ職・理学療法士に強い求人サイトを活用する
求人サイトもハローワーク同様に、気軽にたくさんの情報を収集できることがポイントです。
また、自分で情報収集を行う必要性がある点や人気の求人は募集がうまりやすい点も同様です。
3-2-3. ハローワークを活用する
ハローワークでは、多くの求人を自分のペースで探すことができます。最近はネットでも求人情報を見られますので、とても気軽に探すことができます。
しかし、求人を選んだ先は全て自分でやりとりする必要があります。情報量も最低限のものしかわからないので、しっかり自分で情報収集する必要があります。また、誰でも気軽に情報を知ることができるため、人気の求人はすぐに埋まってしまう可能性が高いです。
3-2-4. 直接応募する
自分でしっかり情報を調べた結果、希望の施設が直接求人を出している場合はそのまま施設へと自分で連絡を取ることになります。
しっかりと強い意志があり、希望の施設へのアピールができるのであれば、直接施設に連絡することで、アピールになる場合もあります。
3-2-5. 知人の紹介
知人の紹介の場合は、転職のハードルは低くなります。だからといって、転職先の情報収集を行わずに就職してしまうと、就職した後に条件が食い違っていたなどのトラブルに発展する可能性がありますので、しっかりと転職先のことを調べておきましょう。
3-3. 整形外科で理学療法士に求められる人物像
クリニックで働く場合は、多くの患者様を担当するため、高いコミュニケーション能力を必要とします。そのため、面接でうまくコミュニケーションが取れないとマイナス要素になります。
また、クリニックは個人で経営していることが多いです。職員全体の人数も少なく、理学療法士が経営的な視点をもって業務を行う機会も多いです。また、多くの患者様に治療に来てもらう必要があります。
機能障害に対して結果を出せる技術はもちろん、患者様に選ばれるために、適切な接遇やマナーは重要なスキルになります。
4. まとめ
理学療法士が整形外科で働く場合、クリニックと病院で業務内容が異なることを理解しておきましょう。
高齢化社会が進む中で、理学療法士が整形外科で活躍することはますます重要になります。
ぜひ、興味のある方は今回の情報を参考にして、自分にあった整形外科分野の転職先を見つけてみてください。