塾講師を辞めたい!悩みの対処方法と後悔しない転職先のポイントまとめ
「塾講師ってなんかかっこいい」と思って働き始めたものの、いざ現場に出てみると「思っていたより大変・・・」、そんな声が新人講師から毎回あがるのが塾講師。家庭の期待に応え、生徒の成績を向上させるという大きな責任に、押し潰されそうになってしまう人もいます。
そこで元塾講師の筆者が、塾講師を辞めたいと思った時の対処法、辞める場合の転職について解説します。
1. 塾講師を辞めるとどうなる?
「塾講師を辞めたい」と思っても、安易な退職は後悔につながることもあります。そこで、まずは辞めると教室や自分がどうなるかを考えてみましょう。
1-1. 集団塾の場合は家庭と塾の信頼関係に悪影響
まず考えるべきことは、あなたが担当してきた授業を引き継ぐ講師がいるかどうか。生徒はお金を払って授業を受けています。
もしあなたが辞めた後、その時間・学年・科目を担当できる講師がいなければ、教室は授業を実施できません。教室がご家庭と約束した授業をきちんと実施できなければ、生徒の退会に繋がったり、他の講師に無理に出勤してもらったりする必要が出るかもしれません。
辞める塾講師としては「たかが1人」と考えがちですが、その1人が教室にとっては大きな存在なのです。
1-2. 個別指導塾の場合は生徒に不信感を与えてしまう
個別指導塾では講師との相性が重視され、担当講師が退職してしまうから生徒も退会するというケースが起こりやすくなります。
「あとのことなんか知らないよ」と辞めていった塾講師を筆者も何人か見ていますが、残された生徒は悲しそうに通っていましたし、相性の良い講師を見つけられず成績も伸び悩んでいました。
生徒が「自分のことなんかどうでもいいのか」と感じてしまわないよう、慎重に考える必要があります。
1-3. 収入が減る可能性が高い
アルバイトで塾講師をしている場合、退職後の収入が減る可能性があります。
塾講師は最初のうちはあまり稼げず、月1万円程度の場合もあるでしょう。しかし、務める期間が長くなるほど収入も増えていく傾向があります。3年ほど勤務すれば、週3日の授業と事務作業で毎月10万円近い収入だって得ることができるでしょう。
これは、スーパーの品出しやレジのバイトを週4日やる場合の7万円ほどと比較しても多い給料です。
正社員として塾講師をしている場合でも、人気講師だと転職で収入が落ちるかもしれません。人気講師なら、多くの授業や報酬の高い学年を担当しているでしょう。
転職をすればそうした評価が基本的に0に戻り、収入が減ります。doda年収ランキング2016(年齢別)によれば、2016年の30代平均年収は467万円とのこと。
もし現段階で年収500万円以上を稼いでいるなら転職によって収入が下がる可能性は高くなるでしょう。
1-4. アルバイトの場合:就職後に役立つスキルを向上させる機会を逃す
生徒の成績向上のために現状を分析し、教室長や保護者、生徒に解決方法の提案や相談を行っていますよね。無自覚にやっている人が多いのですが、塾講師は科目指導スキルだけでなく、生徒や家庭が抱える様々な問題を見つけて分析し、解決策を考えて交渉するスキルも用いています。
教室運営や事務作業を任された講師であれば、リーダーとして仕事をしたり、講師全体の勤務バランスをチェックしたりもします。
また、担当生徒以外の家庭や一般の方からの問合せに応じる機会が増えることで、急な場合でも慌てず対処できるスキルもアップ。
個別指導塾等で講師がカリキュラムを作成して授業を行っているなら、ビジネスでよく言われるPDCAのサイクルを駆使しています。これらは就職後に役立つ実践的スキルです。
1-5. 正社員の場合:キャリアアップのチャンスを逃すかも
20代から30代の塾講師は授業を行う人も多いのですが、30代半ばからは教室運営や管理部門に携わる人も増えます。
もしあなたが30代で「塾講師として授業をするのはもういやだ」と感じて退職を考えているなら、目前に迫っている教室運営や本部での管理職への異動といったキャリアアップのチャンスを逃してしまうかもしれません。
1-6. 正社員の場合:30代後半以降は別の業界への転職は難しい
30代後半以上の塾講師が教室運営や管理に関わることなく授業のみで働いてきた場合は、別の業界に転職することは正直なところ困難。というのは、塾講師が身につけているスキルは、新入社員としては優れたスキルであるものの、ベテランのビジネスマンとはやや性質が異なるのです。
そこで、30代後半以降なら、転職するよりもまずは同じ塾で教室長や管理職を目指しましょう。教室長や管理職であれば、他の会社でも通用するスキルを身につけることができます。他の業界への転職は、そうして教室長や本社勤務を経験してから試みる方が堅実です。
2. なぜ塾講師を辞めたいの?悩み別対処法
「塾講師を辞めたい」と感じているその原因が解決できるなら、退職を避けられるかもしれません。そこで、塾講師によくある悩み別に対処法を考えてみましょう。
2-1. 人間関係がつらい場合
2-1-1. 教室長との関係
教室長との間に何か問題があるなら、リーダー講師に相談を。リーダー講師が信用できないなら、内部通報窓口に連絡するという手があります。
特に教室長から何かしらのハラスメントを受けている場合は、この手をとるしかありません。中小学習塾で窓口自体が設置されていない場合は、リーダー講師に相談するのが先決。
2-1-2. リーダー講師との関係
リーダー講師に何か問題を感じる場合は、教室長に相談しましょう。筆者が勤務していた教室では、実際にリーダー講師の問題行動に他の講師が気づき、教室長に面談を申し入れた結果、リーダー講師は役職から外されて指導を受けることになりました。
2-1-3. 他の講師との関係
先輩講師や後輩講師との関係で問題がある場合は、リーダー講師か教室長に相談を。彼らは教室全体を見ながら働いていますから、現状を分析しつつ一緒に解決策を考えてくれるはずです。
2-1-4. 生徒や家庭との関係
生徒や生徒の家庭との関係で悩んでいるなら、教室長に相談しなければなりません。この種の問題は、契約内容や会社の規定に関わってくるケースがあるため、リーダー講師に相談しても力不足になることがあります。
2-2. 仕事がきつい場合
2-2-1. 授業準備
授業準備をラクにする方法はいくつかあります。
- 新しく担当する授業は得意科目や学年に絞る
- 塾で定められているスタンダードな授業をベースに、自分の授業のスタンダードを決めてしまう(使用教材の種類を減らす・授業展開のパターンをつくる)
- 1週間のうち特定の日にまとめて授業準備を済ませる
授業の予習については、最初のうちは大変かもしれませんが勤続年数が増えれば余裕が出てきますよ。
2-2-2. カリキュラムや報告書作成
塾講師がカリキュラムを作らなければならない塾もあります。授業の報告書をつくる塾も多いですよね。これらの場合は、以下の方法が有効です。
- 学年・科目ごとに1年分のテンプレートを予めつくっておく
- 報告書の定型文をテキストファイルに作成しておき、コピペして修正を加えるて使う
毎回最初から作るよりも圧倒的に労力を減らせますよ。
2-2-3. 問題研究
定期試験問題や入試問題の研究が負担になっている場合は、どんどん他の講師を巻き込んでチームをつくり、分担して作業を進めるようにするのが基本です。
得意科目・学年ごとに分担し、分析項目と内容を記入するシートを作成して分析自体をテンプレ化するとさらにラクになります。
2-2-4. 家庭への連絡
家庭への連絡が多くて他の業務を圧迫している場合は、案件別に定型文を作成して手元に用意しましょう。たとえば、授業に関する連絡、面談や講習会のお知らせについて定型文を用意し、電話では読み上げたりチェックをつけていったりすれば負担が減ります。
2-2-5. 電話や来訪者への対応
電話対応や来訪者への対応で授業が妨害される場合は、授業をしていない講師や事務員に任せられないか、教室長に相談しましょう。
2-2-6. 会議や研修への出席
教室で行われる会議や研修が面倒くさい、という声もよく聞きます。まずは無駄な会議をしていないか分析し、リーダー講師や教室長と相談しましょう。無駄な会議や研修とは、以下のようなものです。
- 議題のない定例会議
- 文書での伝達で十分なのにわざわざ集まる会議や研修
- 事前の議題共有や調査が行われず問題共有のためだけに開かれる会議
- 誰も解決策を考えてきていない会議
- 頻繁にある「全員出席」の会議や研修
2-2-7. 教室の清掃
教室は人の出入りが多く汚れやすいため、たとえ清掃が業務を圧迫しているとしても、清掃自体をなくすことはできません。
清掃の負担を軽減するには、以下を実践してみましょう。
- 役割分担する
- 終了時刻を決める
- 清掃を一気にやりすぎない
メリハリをつけ、完璧主義にならない程度に済ませるのがポイントです。
2-2-8. 休み時間中の生徒による拘束
「休み時間なのに生徒に声をかけられて休憩がとれない」というのも、塾講師にはよくある悩み。生徒に捕まる前に「休憩してきます!」と宣言して、仕事と休憩のメリハリを行動で示すことが大切です。
2-3. 拘束時間と給与が釣り合っていない気がする場合
2-3-1. 頑張っているのに時給が上がらない
塾講師は基本的に時給ですが、実際はコマ単位で計算します。昇給というとコマ単位の報酬×コマ数で出される基本給が上がることをイメージしますよね。
しかし、基本給はあまり急激には上がらないのが実情。事務作業や役職手当で追加報酬をもらうほうが手っ取り早いのです。
2-3-2. 自分だけたくさん働いている気がする
「自分だけたくさん働いてるんじゃないかな」という声は、多くの講師からあがります。それだけ塾講師は大変な仕事なんですね。
まずは他の講師やリーダー講師の働き方を観察し、どうやって仕事の効率を上げているか分析しましょう。もし、明らかに自分の仕事量が多いと感じるのであれば、教室長に相談して業務の分担を検討しましょう。
2-4. 生徒の成績が伸びない場合
塾講師の仕事は生徒の成績向上。しかし、それがなかなか達成できないこともしばしば。「成績を伸ばせず申し訳なくて辞めたい」という場合は、辞める前に原因を探ってみましょう。
2-4-1. 生徒が宿題をやってこない
生徒が宿題をやってこない場合、1人で悩むよりも、先輩講師や教室長に相談したほうが手っ取り早く解決できる場合が多くあります。
2-4-2. 生徒が真面目に授業を受けてくれない
生徒が真面目に授業を受けられない原因で相性の問題ではないケースとして、学習障害や家庭環境など、その生徒特有の問題が原因となっている場合があります。まずは教室長に相談し、必要に応じて家庭に協力をお願いしてみましょう。
2-4-3. 宿題も授業もきちんとやっているのに成績が伸びない
宿題をやってきているのに成績が伸びない場合は、対策方法が間違っているのかもしれません。授業記録や成績表、模試結果を突き合わせて、先輩講師や教室長と一緒に原因を分析しましょう。
2-4-4. 家庭と学習指導方針が食い違う
家庭と塾での学習指導方針の食い違う場合は、目的と手段を確認するためにも、教室長に相談しましょう。塾で何ができるのか、家庭に何をお願いするのかを相談し、必要に応じて保護者や生徒と面談を行うとよいでしょう。
2-5. 思ったより稼げないと感じる場合
「塾講師は思ったより稼げない」と感じる場合は、以下の方法が有効です。
- コマ数を増やす
- 事務作業や役職手当で稼ぐ
- 副業をする
コマ数増加や事務作業、役職手当で稼ぎたいなら、教室長に相談しましょう。事情によっては事務作業を多く振ってくれたり、新入会の生徒の授業を優先的に回してくれたりします。
副業をする場合は、まずは副業OKかどうかを教室長に確認してください。教育業界以外の副業としては、飲食業やカラオケ店、出版社などのアルバイト、書店員があります。小さい子どもが好きなら、資格なしで働ける保育スタッフもよいでしょう。
また、安定した収入とするには難しいですが、在宅ワーカーで働くという方法もあります。
3. 講師を辞めたいときの転職方法
3-1. 転職を決断する前に、教室運営や環境を変えられないか?
3-1-1. 教室が衛生的ではない、使いにくい
教室長やリーダー講師に相談して、模様替えできないか相談してみましょう。物の置き場が悪くて散らかりやすくなっていることも多いもの。また、毎日の終業時に5分間の簡易清掃ができるようになると、「汚い!」とイライラすることも減ります。
3-1-2. 書類作成がやりにくい
授業以外で塾講師の業務を圧迫することの多い書類作成では、「どうやってつくるか」のマニュアル整備も有効です。もし書類作成の場所やパソコンを確保できずに困っているなら、予約制をとりましょう。パソコンを確保できて作業にも集中できます。
3-1-3. そもそも業務が多い
「そもそも業務が多くて体力的に限界だ」という場合は、以下を検討しましょう。
- 別の講師に任せられないか(マニュアルさえあれば他の人に任せられる業務も多い)
- エクセルの自動計算やマクロを使えないか
- フォーマットの修正やテンプレの作成で簡略化できないか
エクセル関連は理系講師に、フォーマットの修正やテンプレ作成は教室長に相談するとよいでしょう。
3-1-4. 他の講師との関係に悩んでいる
他の講師との人間関係が、当該講師への指導やあなた自身の対応だけでは解決できないなら、相手講師かあなたが他の教室へ移籍するという手もあります。これには教室長の判断と手続きが必要ですので、教室長に相談しましょう。
3-2. 学習塾と同じ業界で職場や職種を変えて働く
「もう塾講師を辞めるしかない!」と決断した場合は、どの業界に転職希望かで戦略が異なります。まずは学習塾と同じ教育業界での転職についてみていきましょう。
3-2-1. 同じ学習塾の別の教室で働く
「塾は嫌いじゃないけれど、この教室の塾講師を辞めたい」という場合は、同じ塾の別の教室で働く手があります。
教室には講師と教室長だけでなく事務員がいる場合もありますね。事務員なら、塾講師ほど業務に追われることはありませんし、定刻で帰れることもほとんど。
中小規模の塾であれば教室長に相談して即決する場合もあります。大手塾の場合はそれぞれ手続きがあるでしょうから、教室長にきいてみましょう。
3-2-2. 同じ事業形態の別の学習塾で働く
たとえば個別指導塾の講師をやっていた場合は、別の個別指導塾へ転職するという方法もあります。別の学習塾とはいえ、大きく仕組みが変わることはないでしょうから、転職先でも即戦力で働けます。
大手塾の場合は求人サイトで一括募集していることがほとんど。中小規模の学習塾で求人サイトに求人を出していない場合は、塾の公式サイトにある「採用情報」を見て、その指示に従って応募します。
履歴書には、別の学習塾で働いていたこと、指導した学年と科目、合格実績などをアピールすると、選考で注目されます。
おすすめの転職サイトは以下です。
・doda3-2-3. 異なる事業形態の塾や家庭教師で働く
「個別指導塾の講師を辞めたいが、塾講師が嫌なわけじゃない」というなら、集団塾や家庭教師に転職するのも良いでしょう。それまでの指導実績を活かしながら働けます。この場合も、前項と同様に応募し、履歴書を準備しましょう。
3-3. 別の業界を選ぶ
「塾講師という職業自体を辞めたい」のであれば、別の業界への転職を考えるしかないかも。ここでは、塾講師と比較的親和性が高く、年齢があまり制限されていない職業をいくつかご紹介しましょう。
3-3-1. 子供の面倒を見るのが好きな人
「塾講師は辞めたいけど子どもは好きだ」という場合、学童の事務職に転職する道があります。普通自動車運転免許をもっている方が優遇されますが、保育関係の資格なしで応募できるのは嬉しいですよね。
2015年の法律改正で、学童の対象が6年生に拡大しました。共働きや忙しい家庭の子が放課後・長期休暇の間に通う場所として需要も高い仕事。正社員としての採用もあり、月給は20万円ほどです。子どもたちへの愛情をもって働ければ経験不問とする求人も多くあります。
3-3-2. 英語が得意な人
英語が得意な人は、語学スクールの事務職として働く方法があります。
日常会話程度の語学レベルが求められることが多いのですが、英会話スクールであればさほど問題にはならないでしょう。語学スキルは「身につけたいスキル」の上位ですから、語学スクールの需要も高いといえるでしょう。
時給で働く場合は時給1000円前後、社員として働く場合は初任給20万円前後が多い様子。年齢不問でスクールマネージャーを募集している場合もあります。
3-3-3. 日本語が好きな人
日本語が好きな人は、日本語を教える仕事も良いかもしれませんね。ただ、日本語教育能力検定試験合格や、専門の講座や講義を規定時間数以上受講していることが応募条件になっている求人がほとんど。そして残念ながら、国内では他の語学スクールほどの需要はないようです。
3-3-4. 文章を書くのが好きな人
文章を書くのが好きなら、それを仕事にすることもできます。
最も敷居が低く履歴書も要らないのが、アウトソーシングを利用したライター業。アウトソーシングサービスサイトに登録すれば、その日から仕事可能。ただ、連載や継続案件を獲得しない限り収入は不安定です。最初の数ヶ月では、生活費を十分に稼げないかもしれません。
出版社や企業のオウンドメディアでのライターや編集に転職したい場合は、それなりの実務経験が必要。そこで、まずはアウトソーシングや編集プロダクションで実績を積みましょう。編集プロダクションは社員募集しているところもあります。正社員の月給は17万〜22万円ほどです。
ここまでにご紹介した異業種への転職では、求人数も多い以下の転職支援サイトがおすすめです。
リクルートエージェントまとめ
塾講師は生徒の成績向上という責任を背負って奮闘するお仕事。問題が起きたら一人で悩まずに、他の講師や教室長に相談して教室全体で解決していくことが先決です。
転職は年齢によって成否が大きく分かれますので、戦略的に動きましょう。ただ、その場合でも生徒が悲しむことは極力避けられるよう準備してくださいね。