介護福祉士の仕事内容【完全版】仕事場で異なる役割から必要スキルを紹介
日本は超高齢化社会といわれており、実際に65歳以上の高齢者の人口は3000万人を超え、人口の4人にひとりを高齢者が占めています(平成25年総務省統計局の調べ)。
高齢者が増えるにつれて、身の回りの介助をはじめとした生活のサポートのために、介護の現場で仕事をする介護福祉士のニーズが高まっています。具体的に、介護福祉士の仕事内容を詳しくご説明します。
目次
1. 介護福祉士とは
介護福祉士というのは、社会福祉及び介護福祉士法に基づく、介護士の国家資格です。法律上は、身体または精神の障害のために日常生活に支障がある人に対して、状況に応じた心身の介護を行ったり、身内や周囲の人に適切な介護を教えることとされていますが、実際にはそれだけではありません。
介護福祉士は2007年に制定されましたが、当時は2500万人だった高齢者の人口は今では約3500万人弱にものぼろうとしています。
また、前年である2006年には障害者の社会的自立を支援する障害者自立支援法が制定されたこともあり、この10年間で障害者や高齢者と社会の関わり方そのものが変化してきました。
それに伴い、介護福祉士の役割も高齢者や障害者それぞれのQOL、つまり個々の人生の内容や幸福度、社会的な観点での生活の質を向上させるべく、当事者や周りの家族などの生活全般に関わりながら自立に向けた介護を実践することが求められるようになってきました。
2. 介護福祉士の仕事内容
介護福祉士の仕事にはチームケアが重要で、医師や看護師、栄養士など、様々な医療や介護の専門家と、ときには地域のスタッフと相談しながら進めていきます。
自分の専門領域で何ができるかを考えるのとともに、専門外の仕事は適切な人に依頼する判断力が必要です。その上で、介護福祉士自身の具体的な仕事内容は、大きく4つに分けることができます。
2-1. 身体の介護
身体介護は、介護を必要としている人に直接的行う身の回りの介助です。排泄や食事を始めとして、衣服の着脱や入浴や洗顔、歯磨きなどの衛生管理が含まれます。また、歩行の補助や車椅子での移動なども身体介護のひとつです。
たとえば食事ひとつとっても、小さく切れば自分で食べられる人や、流動食のようにほぼ固形ではない状態にして食べさせてあげる必要がある人もいます。
また、食べること自体は自分で問題なくできても、食事の量や回数が管理できない人もいます。食事だけでなく、それぞれの人が生活の中で何が苦手で何に困っているかというのは人や状況によって大きく異なります。
さらに、歩行や排泄はできる限り自分で行っていくことが自立への後押しになることもあります。個人個人の希望や自立のことも見据えて、適切な介助を選ぶのが介護福祉士の仕事です。
2-2. 生活の介助
障害などによって不便になる日常の行動は、想像するよりも多岐に渡ります。食事や排泄のように、介護を必要とする人に直接的にできるサポート以外にも、間接的に生活を手助けするのも介護福祉士の重要な役割です。たとえば掃除や洗濯、料理などの家事全般や、そのための買い物などです。
生活にはそれぞれその家庭のルールやスタイルがあるように、家事にはそれぞれのやり方やこだわりが反映されやすいもの。ここでも相手の望んでいることをきちんと理解して介助にあたるのは、とても重要なことです。
2-3. 心のケアや社会活動の支援
障害者であっても、高齢者であっても、介護を必要としている人は自身で自由に外にでて活発に活動できない事情がある人がたくさんいます。仕事をしていないケースも多く、ともすれば引きこもりがちになってしまって社会から孤立してしまうことは珍しくありません。
介助者の力を借りるようになって買い物に行く機会などが減ってしまうことで、かえって家族以外の人との接点が狭くなってしまうこともあります。
また、家族間においても、介護を必要としていても遠慮するあまりに希望を伝えることができなかったり、介護の負担で家族にストレスがかかってしまったりした結果、家族と良好な関係を築くことができなくなってしまうことがあります。
介護福祉士は地域の活動の情報を提供したり、話し相手になったりすることで心の負担を軽くし、介護を必要としている人が家族や地域と上手に交流できる機会を作る必要があります。
2-4. 介護に関する相談やアドバイス
障害者や高齢者の介護においては、杖や歩行器などの特別な介護器具が必要とされることがあります。
衣服においても、着脱しやすい靴や、ボタンなどの装飾品が少なく着脱が簡単なものなど、本人たちが使いやすく介護の手助けにもなるものはたくさんあります。場合によっては、介護のために自宅に設置する設備などの中には自治体からの貸し出しを受けられるものなどがあります。
このように、介護に関わる器具や行政の制度などはそれぞれの状況によって必要なものが異なります。介護用具のアドバイスや使い方の指導をしてあげるのは、介護福祉士の仕事のひとつです。
そして、特に高齢者では必要な介護の状況などは年々変化していくことが考えられます。家族にとっては介護は決して短期的な問題ではなく、家族の生活にとっても大きく影響することです。このような場合も、介護福祉士が地域や家族と話し合って長期的な介護の計画をたてることができます。
3. 仕事場で異なる介護福祉士の仕事の特徴
介護福祉士がはたらく場所は、大きくふたつにわけることができます。まずひとつ目は、介護を必要としている人の自宅など、在宅型での介護を支援するケースです。
もうひとつは、老人ホームやデイケアのように、通所型や住居型で介護を必要としている人を受け入れる介護施設です。さらに介護施設にはいくつかの種類があるので、具体的にそれぞれの仕事場においての介護福祉士の仕事の特徴を比較してみましょう。
3-1. 訪問介護
訪問介護の場合、介護を必要としている人の状態に合わせて「一部介助」または「全介助」と、必要な介助がわけられます。一部介助というのは適切なサポートによってその生活動作が自分でできる場合の介助です。たとえば、支えてあげれば歩行が可能な場合などは一部介助にあたります。
それに対して、重度の全身障害や高齢の結果、寝たきりになってしまった場合など、自立では生活動作が全くできない、という場合が全介助です。
そして、一部介助の場合には家族と同居をしていない場合もあったり、全介助の場合には通常は家族と同居していたりと、家族の有無なども人によって異なります。
介護福祉士は決められた時間に利用者の自宅を訪問し、あらかじめ決まっているそれぞれのケアプランに基づいて介護を行います。訪問介護では、買い物や家事などの生活介助のニーズが高かったり、介護福祉士が訪問していない時間に家族が介護しやすいように、適切なアドバイスが必要とされることが多いのが特徴です。
3-2. デイサービス
日中の時間帯に利用者が通ってきて、入浴や食事などの介護を受けられるのがデイサービスです。自分で通うことができなかったり、家族が連れてこられない状況の利用者でも、送迎してくれるので利用可能な施設が多いです。デイサービスの利用者には、自らの身体活動の範囲が比較的広い人が多い特徴があります。
デイサービスでは複数の介護スタッフがいて、複数の利用者の食事や入浴、排泄の介助などや、レクリエーションとして楽しい時間を過ごせるように工夫されています。
介護福祉士は、施設にいる間の短い時間のなかで、体調や気分がすぐれない場合には迅速に察知したり、緊張をほぐして快適に過ごしてもらうためのコミュニケーションが必要とされます。
週に一度、など、定期的に利用している利用者が多いため、以前にも通所の経験がある利用者に関しては、食べ物の好みや健康の状態などの資料が引き継がれ、できるだけスムーズな介助ができる仕組みです。
デイサービスの運営自体は定期的な休日を設けている施設や、休みなく運営している施設などいろいろなので、それによって介護福祉士もシフト制で働いていたり、労働時間が固定されていたり、とワークスタイルが異なります。
3-3. 老人ホーム
老人ホームには、特養と呼ばれる特別擁護老人ホームと、有料老人ホームがあります。住居型の介護施設で、主に社会福祉法人や地方公共団体が運営しているのが特別擁護老人ホームです。主に65歳以上で自宅での生活や介護が困難な人から優先的に入所することができます。
一方、民間事業者によって運営されている老人ホームが、有料老人ホームです。有料老人ホームの場合は入居条件が特別養護老人ホームに比べて幅広く設定されているため、さほど介護を必要としていない人が利用していることもあります。
健康型、住宅型、介護型の3種類があり、健康型有料老人ホームは、原則的に介護が必要ない人しか利用できません。そのため、介護福祉士の職場となるのは住宅型と介護型のホームです。住宅型の利用者は訪問介護を利用します。介護付きのホームでは、その施設に属している介護スタッフが介護にあたります。
老人ホームの介護福祉士は、日常生活の介助や身体介護、リハビリテーションやデイケア同様にレクリエーション活動などの仕事を行います。
また、夜勤の仕事もあります。ほとんどの施設では日中に比べ、夜間はスタッフの数が少ないのが通常で、複数名で交代に仮眠をとるなどしながら介護業務にあたります。
現在の特別養護老人ホームはユニットケアと呼ばれる、全室個室のタイプが主流です。夜間スタッフは1時間に1回など、定期的に全室をまわり、ベッドからの転倒や具合が悪い人がいないかを確認します。
また、各部屋からはナースコールのようにボタンでスタッフを呼び出せるようになっているので、呼び出しがあった場合は該当の利用者の元に駆けつけます。必要に応じて病院や看護師などに連絡し、連携を求める判断力が必要とされます。
3-4. グループホーム
グループホームは、認知症で介護を必要とする人が、介護サポートを受けながら共同生活をおくる住居型施設です。一般的には5人から10人未満のユニットで、炊事や洗濯を分担しながら生活しています。
グループホームでの介護福祉士の仕事は、他の介護施設に比べ、認知症の方向けにやや特化した内容の介護になります。
たとえば、利用者と一緒に日常の家事や買い物などを行い、なるべく通常に近い行動を行うことで認知症の進行の抑制や身体機能の低下防止に努めます。認知症の進行によりその他の身体介護が必要な場合は、必要に応じて適切な介護をします。
3-5. 身体障害者療護施設
介護福祉士を必要としている人は高齢者の方ばかりではありません。先天性の疾患や事故、病気などによって身体に障害がある人で、日常的に介護が必要な人が生活している施設に、身体障害者療護施設という施設があります。
ここでは、利用者の状態に合わせて高齢者のとき同様の身体介護を始め、健康管理や生活指導、リハビリテーション、就労支援などを行っている施設もあります。
介護福祉士は主に日中や夜間の食事や排泄、入浴などの身体介護や買い物などの生活支援、レクリエーションの提供や健康管理などを行っています。就労を見据えたケアプランを作成したり、高齢者にも増して様々な環境に対応していく柔軟性が必要とされます。
4. 介護福祉士の仕事で必要な資格とスキル
4-1. 介護福祉士の資格について
介護福祉士になるには、介護福祉士国家試験に合格する必要があります。試験は筆記試験と実務試験があり、筆記試験を受けるためには下記の受験資格を3つ以上満たしている必要があります。
・3年以上、介護の実務経験があり、実務者研修が修了している人
・福祉系高校ルートの新カリキュラム修了者と特殊高校等の介護技術講習が修了している人(2009年以降入学者) *1
・経済連携協定(EPA)ルートで3年以上、介護の実務経験があり、介護技術講習または実務者研修を修了している人 *2*1:福祉系高校ルートで、旧カリキュラム2008年以前の入学者は、実技試験を受験しなければなりません。
*2:経済連携協定(EPA)ルートで、介護技術講習または実務者研修を修了していない人は実技試験を受験しなければなりません。引用:ケア資格ナビ「介護福祉士の受験資格について」
ここでいう3年以上の実務経験とは、介護に関わる仕事に在籍していた従業期間が3年、かつ実際の従業日数が540日以上であることを指しています。この条件を満たしていれば、雇用形態はアルバイトやパートであっても問題ありません。
また、実務者研修を受けていたり介護の技術講習を受けていたり、する場合には実務試験が免除になることがあります。受験資格の詳細については公益財団法人社会福祉振興・試験センターのホームページを参考にしてください。
4-2. 介護福祉士になるための必要スキルや適正は?
介護スタッフのエキスパートである介護福祉士には、介護に関する技術と知識が必要とされています。介護を必要とする人の状況はケースバイケースで、個々の状況が変化しやすいため、介護に関する新しい知識を学ぶ姿勢も必要です。
人に直接接する仕事なので、相手を理解しようとする気持ちや、状況に合わせて適切な介護方法を選ぶ冷静な判断能力も必要とされています。決して一人では完結できないのが介護という仕事です。
介護を必要とする人はもちろん、介護に負担を感じることもある家族や、周囲のスタッフなど、様々な人と関わりがあるので、高いコミュニケーション能力や人を気遣う思いやりが大切です。
また、介護福祉士は健康面への配慮も大切です。高齢者や身体障害者の中には体力や免疫力が低下している人もいるため、風邪などの病気でもうつりやすく、他の大きな病気のきっかけになることがあります。
また、そもそも介護の仕事は長時間の立ち仕事だったり、ときには入浴や排泄の介助の際に人を支えたり抱えたりすることがあります。そのため、自分自身の健康にも配慮ができて、体力があるほうが好ましい仕事です。
4-3. キャリアアップについて
介護福祉士の資格を取得したあとも、様々な形でキャリアアップを目指すことができます。たとえばケアマネージャーの資格を取得すると、在宅介護をしている家族や介護利用者自身の希望などを聞いて、状況的な総合的判断に基づいて介護保険の受給対象者に対してケアプランを作成することができるようになります。
最近は入所希望者が多すぎて、なかなか老人ホームの入所対象になれず、在宅での介護しか選択肢がない人が増えています。介護福祉士同様、ケアマネージャーも非常に需要が増えている仕事です。
介護福祉士自体に関していうと、今まではキャリアや技術の違いを明確にするものはありませんでした。しかし、今後は介護の質をさらに向上させるべく、認定介護福祉士という資格が創設されることが決定しています。
厚生労働省によると、認定介護福祉士は、実務経験が7〜8年以上あり、介護チームのリーダーの実務経験があることが望ましく、施設と在宅ケアのどちらの経験もしてきた人を対象とするようです。あらゆる場面での介護において、介護チームをまとめたり、チームケアにおいての要となっていくことが想定されます。
ただし、こちらの資格は具体的な創設時期はまだ未定の段階です。
まとめ
介護の仕事というのは、精神的にも肉体的にも決して簡単な仕事ではありません。しかし、実際に介護してくれる人によって、前向きな気分になることで、介護利用者の健康状態が良くなることさえあるのが介護の現場。
介護利用者を笑顔にし、人生を豊かにするとてもやりがいのある仕事です。興味がある方は、ぜひチャレンジしてみてください。