理学療法士の給料・年収【完全ガイド】収入の実態を徹底解説!初任給や時給まで
リハビリテーションの専門職として活躍する理学療法士。
理学療法士の人口は、全体で13万人ほどで、毎年約1万人の理学療法士が誕生しています。
ひと昔前までは資格者が不足しているといわれ、いわば「引く手数多」といわれていましたが、現在は需給バランスが崩れつつあり供給が超過しているとの声も。有資格者が増えてくると影響を受けるのが給与(年収)ですよね。
そこでこの記事では理学療法士の収入について、給料・年収を様々な角度から実情を解説します。
これから理学療法士を目指す方も現役で理学療法士の方も、ぜひ参考にしてみてください。
1. 理学療法士の給料・年収
1-1. 理学療法士の平均の給料と年収
理学療法士を目指す方も現役で理学療法士の方も、仕事の内容と並んで気になるのが収入面ではないでしょうか。
厚生労働省が公開している「平成27年賃金構造基本統計調査」をみてみると、理学療法士の平均の月学給与は28万4千円(職務手当や住宅などを含む)となっています。ここから税金等が差し引かれることになりますので、手取り金額は23万円程度となります。年収でいえば平均400万円ほどです。
※資料:厚生労働省・平成27年賃金構造基本統計調査より作成
1-2. 理学療法士の平均の賞与(ボーナス)は約64万円
理学療法士の賞与(ボーナス)においても、厚生労働省の賃金構造基本統計調査により報告されています。理学療法士の賞与(ボーナス)の額はおよそ64万円です。
これは1回あたりの金額ではなく、年間でもらえる賞与になります。たとえば賞与が年間に夏・冬の2回のところであれば、半額ずつが支給されるということです。
医療や福祉の業界は、他の業界に比較すると景気などによって収入面で大きな変動がありません。一般に賞与は景気などによって変化しますが、理学療法士の賞与は過去の推移をみてみても大きく変動することはないようです。
1-3. 年齢別・男女別による給料・年収の違い
年代別の年収の違いはどうなっているのでしょうか。理学療法士の場合は勤務年数というものも考慮されますが、実務経験の年数というものも同時に考慮されるケースが多いものです。これは「資格を取得し現場でどれくらい経験があるか」というものです。
一般に医療・福祉・介護の分野でも年功序列式に給与が上がるというケースが少なくありません。そのときにひとつの病院・施設で何年はたらいたかだけでなく、資格をとってどのくらい現場経験があるかも重要な給与の指標となります。
平均すると30代以降から平均の所得に差がみられるようになります。平均年齢が若いとされる理学療法士は、実務経験が6〜7年くらいになってくると組織では中堅クラスです。
30代になると主任、管理者、科長といった役職などが与えられるケースもあり、役職手当などがプラスされるケースが多くなるのです。
※資料:厚生労働省・平成27年賃金構造基本統計調査より作成
また、最近では女性の理学療法士も増えています。養成校の割合をみても若干男性が多いところが多いものの、ほぼ半々だと思ってよいでしょう。年収による性別の違いはあるでしょうか。同じく理学療法士(男性)の返金年収は約413万円です。
一方女性は約386万円とやや低めの平均となっています。
これは男女で給与が異なるというより、女性の場合は産休や育児などで職場をいったん離れることが多いこと、また再就職も育児と仕事の両立を考えてパートなどで勤務する機会が男性より多いというということが影響しているとされます。
※資料:厚生労働省・平成27年賃金構造基本統計調査より作成
1-4. 平均年齢が若い理学療法士。平均給与はやや低め
医療職の収入面での大きな特徴として、「景気に左右されにくい」ということがあります。景気がわるいときであっても安定した収入が望める一方で、どんなに景気がよいからといって、大幅にボーナスが増える・昇給するといったことも少ないのが特徴です。
医療・介護・福祉に関わる人の平均年収は約300〜400万円とされていますので、理学療法士は業界内では平均的な収入を維持しているといえます。ただし、これはあくまでも平均年収をみた場合に限られます。
理学療法士などの求人をみると、月額給与は20万円代〜60万円代まで大きな差があるのがわかります。勤務する病院や施設、あるいは勤務が医療機関なのか介護施設なのかによっても年収にバラつきがみられます。
多くの病院や施設の場合、年齢に従って年収が増える傾向にあります。しかし理学療法士は医療・介護・福祉に関わる専門職のなかでも年齢が若いという特徴があります。
例をあげてみてみると、医師の平均年齢が45歳、看護師が40歳、薬剤師が39歳であるのに対して理学療法士の平均年齢は31歳です。これは業界内のほかの職種とみてももっとも年齢が若い職種の部類に入ります。
そのため、若い年代が多い理学療法士の所得を平均でみると比較的低い傾向となってしまうのです。実際にはたらいてみると平均所得よりもかなり多い、あるいは逆にちょっと少ないといったことも十分ありえるのです。
1-5. 分野(業種・業態)による年収の違いについて
理学療法士が活躍するのは一般病院やクリニックなどの医療分野および介護分野になります。
介護分野とは介護保険を使って行われるサービス全体のことを指すことが多く、はたらく場所は、デイサービス(通所介護)、デイケア(通所リハ)、老人保険施設、訪問看護ステーションなどがあります。
理学療法士の所得の面から2つの業界を比べてみると医療分野の方が給与が良いといわれています。
※資料:厚生労働省・医療従事者の需給に関する検討会第2回 理学療法士・作業療法士需給分科会資料より抜粋
医療分野での平均年収が474万円と報告されているのに対して、介護分野は419万円となっていて、およそ50万円の差があります。
1-6. 収入面での差が大きい訪問看護ステーション
平均的な年収だけをみると介護業界よりも医療業界の方が良いと思われるかもしれませんが、そうともいい切れません。介護業界といっても施設の形態や規模はさまざまです。
大きな施設になるほど病院などに準じた所得となる傾向がみられますが、小さな規模の施設はインセンティブといって、出来高方式(歩合制)などを採用しているところもあります。この傾向がとくにみられるのが訪問看護ステーションです。
訪問看護ステーションとは、その名の通り患者さんの家を訪問し、自宅でリハビリを行う介護サービスです。訪問看護ステーションは、看護師を管理者として理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などのリハビリ専門職者が勤務しています。
厚生労働省の調査「訪問看護ステーションの事業運営に関する調査詳細」によれば、全国に7000近くの事業所があり、そのうち約30%は株式会社や合同会社などの一般企業で、看護師や理学療法士が起業しているところも少なくありません。
訪問看護ステーションではたらく専門職者の募集要件には、年収300万〜600万円程度と大きな差があります。月額給与は30万円代〜というところが多く、場所によっては50万や60万というところもあるのです。
訪問看護ステーションの給与に差があるのは、出来高方式(歩合制)などの採用があるためです。訪問件数を多く回るとその分だけ収入が増えることになります。
たくさんの患者さんを訪問すれば収入面に見返りがある一方で、基本給などが低めに設定されているところもあります。このように、理学療法士の収入は平均年収だけでは判断できない面もあり、一概に医療分野の方が給与が良いとはいえないのが現状です。
1-7. 職場の規模による給与の違い
一般の年収というのは会社・施設の規模によっても給与面が違ってきます。理学療法士の身近なところでいえば、大規模な病院と地域の小規模クリニックなどでは平均年収に違いがあるということです。
※資料:厚生労働省・平成27年賃金構造基本統計調査より作成
企業規模の年収面での違いの特徴として、規模が大きいところは月給が約20万円代後半からで、その分賞与が60万円以上に設定されています。
規模が小さいところは月給がやや高めで30万円代ですが、その分賞与が50万円代となっています。賞与は施設の売り上げなどに応じて前後する傾向も否めず、規模が大きいところほど賞与額が安定しているという傾向があります。
全体としては施設規模が小さいクリニックや施設ほど平均年収が高めという結果になっています。また企業規模が小さいところは全体の売り上げをスタッフに還元するという方法を採用しているところも多く、その分賞与などの上げ下げのフットワークが軽いということもあります。
逆に組織が大きいところでは、年収等の変更は難しいことが多く、基本的には大きな年収の変動がないことも規模と年収による違いに少なからず影響を与えているといわれています。
2. 理学療法士の収入の実態を他の視点からも
2-1. 理学療法士の初任給はどれくらい?
一般に医療・福祉・介護の分野での初任給は、
■大学院卒の場合:約22万円
■大学卒の場合:約19万2千円
■短大・専門学校卒の場合:約17万7千円
とされています。理学療法士も大学院卒や大学卒、短大あるいは専門学校卒などがありますが、実際のところは初任給に大きな違いがありません。病院や施設によっては若干の差を設けているところもありますが、多くは5千円〜1万円程度です。
初任給には、施設の種類や地域格差などにより多少の変動があるものの、およそ年収350万円程度からのスタートとなります。
2-2. 理学療法士の昇給はあるの?
現状では理学療法士の昇給は比較的安定して推移しています。年代別にみても年齢や経験年数に応じて増えています。医療職者の場合は、勤続年数によって昇給が見込まれるケースもありますが、そのほかにも実務経験というものが考慮される場合が多いものです。
求人票をみると
「前職の給与を考慮します。」
「経験年数を考慮します。」
といった趣旨の内容が書き添えられています。資格取得後の経験に応じて給与の水準が保たれるというのは国家資格のひとつの魅力となります。理学療法士の昇給に影響する要素は、年齢、実務経験、役職などです。
ひとつの職場に長年勤務することで昇給が見込まれるケースもあれば、実務経験が評価され転職を機に昇給するケースもあります。参考に勤続年数による年収のモデルケースをみてみましょう。
【モデルケース1】
■総合病院勤務Aさんの場合(経験1年目:22歳)
◎基本給:17万3千円
◎資格手当:2万円
◎住宅手当:5千円
◎残業手当:3万5千円
◎その他の調整手当:1万3千円
合計:24万6千円
賞与:32万×2回
年収にするとおよそ330〜360万円
【モデルケース2】
■総合病院勤務Bさんの場合(経験6年目:28歳)
◎基本給:20万3千円
◎資格手当:2万円
◎住宅手当:1万5千円
◎残業手当:3万4千円
◎その他の調整手当:2万5千円
合計:29万7千円
賞与:48万×2回
年収にするとおよそ430〜450万円
【モデルケース3】
■総合病院勤務Cさんの場合(経験22年目:44歳、役職:技師長)
◎基本給:38万5千円
◎資格手当:2万円
◎住宅手当:1万5千円
◎残業手当:4万円
◎その他の調整手当:5万円
合計:51万円
賞与:80万×2回
年収にするとおよそ700〜750万円
【モデルケース4】
■介護系施設勤務Dさんの場合(経験8年目:30歳、役職:管理者)
◎基本給:10万5千円
◎資格手当:10万円
◎能力手当:10万円
◎管理者手当:3万円
◎住宅手当:1万円
◎残業手当:3万円
◎その他の調整手当:3万円
合計:40万5千円
賞与:70万×2回
年収にするとおよそ600〜650万円
※データ:著者のモニタリング調査より
ここから所得税等が差し引かれることになります。
2-3. 理学療法士の収入以外の”待遇”は?
多くの理学療法士は、職場を選択するときに収入面以上に、待遇をみているという調査報告「第43回日本理学療法学術大会抄録集」があります。
具体的には
・研修制度等の環境
・職場の雰囲気
を重視している人が多いとされます。卒業後も多くの勉強会・研修会に参加する理学療法士にとって、「学ぶ」ということが重要視される傾向にあります。
病院や施設でも研修会への参加を推奨しているところも多く、また組織内での勉強会等が行われるところもあります。理学療法士にとって勉強しやすい環境と良好な職場の雰囲気というのは収入面と同じ、あるいはそれ以上に重視される傾向にあります。
職場選びのときには、研修会などへの参加を推奨しているかどうかは待遇面のなかでも重視されています。
そのほか、収入面での待遇として専門職手当、住居手当、休暇制度(有給や産休など)、院内保育所、社宅、医療保険・年金などの社会保障などがありますが、これらは職場によって制度が設けられているところ、そうでないところがあるので事前に調べておくか聞いておく必要があります。
2-4. 理学療法士の退職金
勤めている会社などを辞めるときに支払われる退職金。
義務化された制度ではないので退職金制度があるかどうかは職種ではなく、はたらく職場によります。最近では小さな事業所であっても退職金制度を設けているところがほとんどです。理学療法士の職場の多くも退職金制度を設けているところが多いです。退職金の計算は
退職金=退職時の基本給×就業年数×給付率
で算出されます。基本給は残業手当、資格手当、住宅手当などが含まれないものです。また退職金は勤続年数によって一定ではないところもあります。勤続10年と勤続15年では支給額が1.5~2倍違うともいわれます。
また勤続10年と勤続20年だとさらに3倍近く変わる企業などもあり、退職金制度はあっても支給額は職場によって規定があると考えておきましょう。
また勤続1年目から退職金が支払われるというケースは稀で、多くは3年以上など条件を設けています。退職金が気になる場合は、求人票の記載をよくみるか就職前に問い合わせておくことをおすすめします。
2-5. 理学療法士の公務員の給料
公務員の給与は職種、勤続年数、役職などによって変わります。公務員といっても、市町村などが運営するものもあれば、国が運営に関与している独立行政法人などがあります。
市町村が運営する機関に勤務する理学療法士であれば地方公務員(市職員)に準じた身分になり、独立行政法人系の機関であれば身分は国家公務員に準じたものとなります。
市町村などの自治体によって一般の公務員の給与が違うのと同じで、どの市町村ではたらくか、あるいは国家公務員か地方公務員かで初任給も違えば、年収、手取り、昇給率、賞与、待遇なども異なります。
参考までに国家公務員の理学療法士の給与をみてみましょう。給与は、国家公務員の人事管理を担当する行政機関である人事院の「俸給表」とよばれる給与支給表に示されています。
その月給17万円程度と民間よりも少ない傾向があります。またボーナスはおよそ基本給の4ヶ月分とされていますので、年収は300万円〜のスタートとなります。ただここに諸手当として専門職手当、住居手当、地域手当、業績手当(ボーナス)があります。
この他にも医業収支が良好な病院に支給される年度末賞与や扶養手当、時間外勤務手当、特殊業務手当などが加わるところも少なくありません。
さらに様々な休暇制度や妊産婦に対する軽減処置、研修制度、院内保育所、社宅、医療保険・年金など福利厚生も非常に充実しているケースが多いので、公務員には年収以外にも恵まれた待遇面があることが魅力となります。
2-6. 独立・開業による収入は?
理学療法士の資格だけで独立・開業することはできませんが、資格を生かして開業する人もいます。訪問看護ステーション、デイサービスなどの介護分野ではそれが可能です。
ただし、理学療法士単独での開業はできず、看護師、介護スタッフなどの人員をそろえなければ開業はできません。
成功すれば、年収1000万円を超えるような人もいますが、理学療法の知識や技術以外にも、経営・マネジメントなどの知識が必要となるほか、収入に直結する保険制度の変化などの知識も必要となります。
3. 理学療法士の非正規雇用(パート)の給料・時給
3-1. アルバイト・パートの時給、月収
理学療法士のパート・アルバイトは基本的には時給制となりますが、訪問看護ステーションなどでは一件の訪問あたり〇〇円と設定しているところもあります。
時給の場合は1,500円〜3,000円程度となっています。訪問件数による場合は、1件あたり3,500円〜5,000円で、訪問の件数、1件あたりの時間などによって変動します。
3-2. 理学療法士の派遣の給与はどのくらい?
派遣とは、ある会社や組織に在籍しながら必要に応じて施設などに出向くことになります。派遣はやや特殊な雇用形態ですが、めずらしいものではありません。ただ医療の分野では派遣業は、厚生労働省によって原則として禁止されています。
参考:厚生労働省「労働者派遣事業を行うことができない業務は・・・」
ただし、以下の場合は例外的にみとめられています。
◎正社員等の雇用を促すために紹介として行う場合
◎産前産後休業、育児休業、介護休業 など緊急性の高い人員確保の場合
◎厚生省が指定するへき地などで医療人材が大きく不足している場合
この場合、標準的な給与や時給などは相場としてまもられていることが多く、基本的には先方の給与規定に準じることになります。
派遣業だからといって特別な優待も給与の減額などもないのが一般的です。時給制の場合は1800円〜2000円前後のところが多く、月給制の場合は20〜30万円となり、理学療法士の平均的な収入となっていることが多いです。
3-3. 理学療法士が収入をアップさせる秘訣は?
開業する(自分で治療院・クリニックなどを開設する)ことができない日本の理学療法士。では理学療法士として収入をアップさせるためにはどのような方法があるのでしょうか。
3-3-1. 転職を機に管理者などの役職を目指す
理学療法士が組織に長年所属することで大きく給与を伸ばすのは公務員でないかぎり難しいという現状があります。組織内に属していながら収入アップをめざすならば役職のポストを狙うというのが現実的です。
しかし理学療法士の平均年齢は若く、経験6〜7年でも中堅クラスです。直属の上司の年齢も自分と変わらないということも少なくありません。こういった環境で役職のポストを目指すのは難しいため、転職の機会を利用するという方法があります。
たとえば病院勤務などである程度の経験を経て、少し規模が小さい介護系施設などであれば管理者のポストも十分に狙えます。
また伸び盛りの施設などで店舗数が増えつつあるところであれば、ひとつの施設の管理者ではなく、数店舗を任されるエリアマネージャーなどの役職につくケースもあります。役職が上がれば当然給与もあがりますので、収入を増やすことも十分に可能です。
3-3-2. インセンティブ制度がある会社で全力投球する
インセンティブ、つまり歩合制をとっていたり、人物評価制度などを採用し「頑張っている人には収入面で還元する」という方法を取り、それを求人できちんと示している施設や病院があります。そういったところを選んで就職するのも収入アップの有効な方法となります。
たとえば、訪問看護ステーションなどでは訪問件数が多い人にはその分の収入を上乗せするというところも多いです。訪問件数(担当患者数)が1日5件ならば月収40万、1日6件ならば月収50万といった具合に、自分の頑張り・能力が収入として評価されるというも。
こういった方法を採用している企業では、たとえ経験年数が短い若手の理学療法士であっても年収500〜600万円代を得ることも可能です。
3-3-3. 海外ではたらくという方法もある
言葉や勉強の壁がありますが、理学療法士が社会的に高い地位を獲得している国ではたらくという方法もあります。たとえばアメリカでは理学療法士の開業権があり、クリニックを開業することができます。
また病院、高齢者施設、訪問リハビリ、学校、研究機関、スポーツ施設、自営業(個人契約による活動)などさまざまです。アメリカの理学療法士の平均給与は2014時点で、約83940米ドルとされています。1ドル100円で換算するとおよそ830万です。
ただ語学試験や勤務する州単位で実施される専門試験などをクリアしなければならずハードルは高いですが、実際にアメリカをはじめ欧米で活躍する日本人理学療法士もいます。
3-3-4. 開業するという方法
開業権のない理学療法士でも起業する方法があります。訪問看護ステーションやデイサービスなどではそれが可能です。とくに訪問看護ステーションで起業する理学療法士は多いです。
最低2.5人以上の看護師をそろえなければならず、人員の確保という点、また目まぐるしく変わる法制度の改正などに柔軟に対応できなければなりませんが、開業するという点では魅力を感じる人も多いです。
経営面の勉強、教育、営業、スタッフの確保、利用者さんの確保など大変ではありますが、それが十分にこなせるのであれば雇用される以上の収入アップは目指すことができます。
ざっくりと訪問看護ステーションのお金の流れをみてみましょう。訪問1件あたりの平均単価を8000円とします。
・8000円×5件×理学療法士1人=4万円
・これが週に5日間勤務したとすると20万円
・スタッフが10人稼働したとすると月商800万円
年商は単純計算して9600万円となります。理学療法士の平均年収+諸経費で10人分の経費を差し引いた残りは4000万ほどとなります。ここから車のリース代、家賃等の諸経費を差し引くと手元には3400万円ほど残ります。
ここで自分の給与を設定するということにます。経営がうまくいっている人であれば1000万を超える年収を得ている理学療法士もいます。これはあくまで単純計算した理想値ですが、大雑把な目安となります。
実際にスタッフを数十人規模で稼働している訪問看護ステーションも多く、新しいところも年々増えつづけています。
まとめ:年収は業界によって幅がある
理学療法士の収入は、病院・施設の規模、はたらく業界によって幅があります。介護分野にはその傾向があり、医療系の機関ではおおむね400万円前後となっています。
今までは身体の維持・改善に関わることが多かった理学療法士ですが、現在は予防という観点からリハビリテーションが見直されつつあります。理学療法士の供給超過が心配されている一方で、求人件数が増えつつあるという見方もあります。
収入面を考えるのであれば、医療や介護といった社会情勢にも注目しつつみていく必要があります。
《参考文献》
*厚生労働省・賃金構造基本統計調査
*保健医療技術学部論集・理学療法士・作業療法士の給与総額とその規定要因について
*理学療法科学 31・理学療法士における職務満足度に関連する因子の検討
*理学療法学 第38巻・リハ ビリテーションの未来図理学ー療法士は社会にどう貢献すべきか
*第43回日本理学療法学術大会 抄録集・理学療法学生の就職意識について
*理学療法学 30・理学療法学生の就職決定因子についての分析
*日本理学療法士協会・-平成 22 年度求人調査報告書
*厚生労働省・医療従事者の需給に関する検討会第2回 理学療法士・作業療法士需給分科会資料より抜粋
*厚生労働省・医療従事者の需給に関する検討会 第2回 理学療法士・作業療法士需給分科会参考資料
*人事院・別表第一 行政職俸給表
*厚生労働省・労働者派遣事業を行うことができない業務は
*構成路宇津翔・派遣会社の皆さまへ
*社団法人 全国訪問看護事業協会 ・訪問看護ステーション経営概況緊急調査報告書
*アメリカの理学療法とリハビリテーション
*U.S.News Physical Therapist salary