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「新商品のマーケティング戦略を考えましょう」「もっとマーケティング的な視点をもたないといけない」・・・・など、マーケティングという言葉は日常のビジネスの中で実に頻繁に登場します。

しかし、「マーケティングって何ですか?」という問いかけに対して答えるのは意外と難しいものです。

今回はマーケティングとは何かという定義から、マーケティングに対する考え方の変遷、そしてマーケティング活動はどのように進めるのかについての基礎をまとめました。

1.マーケティングとは何か?

はじめに様々な学者や組織によるマーケティングの代表的な定義をご紹介しましょう。

提唱者
定義
ピーター・ドラッカー マーケティングの究極の目的は売り込みを不要にすることである
セオドア・レビット マーケティングとは、顧客の創造である
フィリップ・コトラー マーケティングとは、個人や集団が製品および価値の創造と交換を通じて、そのニーズや欲求を満たす社会的、経営的プロセスである
アメリカマーケティング協会 マーケティングとは、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある製品サービスを創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセスである
日本マーケティング協会 マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である

ドラッカーとレビットの定義はどちらもシンプルで分かりやすいものですが、これだけでは実際に何をするのがマーケティングなのかは分かりにくいかもしれません。

マーケティングの権威であるコトラーの定義では、マーケティングとは何をすることなのかをかなり具体的にイメージできると思います。コトラーの定義のポイントは、マーケティングの起点を消費者のニーズや欲求に置き、それらを製品及び価値の交換で満たすためのプロセス全体だと言っているところです。

アメリカマーケティング協会の定義では、「価値のある製品サービスを創造・伝達・配達・交換するための活動」と、マーケティングの範囲を幅広く考えています。

同じく日本マーケティング協会の定義でも、「市場創造のための総合的活動である」と、幅広く考えています。

これらの定義で分かるように、マーケティングとは「広告や販売促進、営業といった狭い範囲を意味するのではなく、顧客への価値提供プロセス全体に関わるもの」だと定義できそうです。

2.「マーケティングの考え方」の歴史的な移り変わり

マーケティングの権威であるコトラーによると、マーケティング・コンセプト(マーケティングに対する基本的な考え方)は時代とともに下記のように変遷しています。

マーケティング・コンセプトの歴史的変遷

2-1.マーケティング1.0は「製品を販売すること」

マーケティング1.0の目的は製品を販売することです。
基本的に需要が供給を上回り、つくれば売れた時代のマーケティングの考え方であり、製品やサービスの情報につてマス・メディア等を通じて顧客に伝えること、有力な流通チャネルを開拓して販売力を強化することがマーケティングの中心的活動でした。

2-2.マーケティング2.0は「顧客のニーズを満たすこと」

マーケティングの目的が製品を売ることから消費者に満足してもらい継続的に購入してもらうことに変わったのがマーケティング2.0です。

モノへのニーズがある程度充足されると同時に、消費者の好みや価値観が多様化した時代のマーケティングに対する考え方です。
マーケティング2.0では、消費者のニーズを知り、ニーズを満足させる製品やサービスをつくりだし、認知・理解してもらい、適切な手法で提供することがマーケティングの主な活動になりました。

2-3.マーケティング3.0は「社会をより良くすること」

消費者に満足してもらい継続的に購入してもらうという目的に、世界をより良い場所にするという社会志向の目的が加わったのがマーケティング3.0です。

この背景には、少子高齢化や貧富の差の拡大等の社会的課題の深刻化とFacebookに代表されるソーシャル・メディアの普及があり、マーケティングには製品サービスの社会的価値や企業のビジョン等を伝えることが求められるようになりました。

2-4.そしてマーケティング4.0は「生活者の自己実現?」

コトラーは、マーケティング3.0の次のステップとして、生活者の自己実現を目的としたマーケティング4.0も提唱しています。マーケティング4.0についてはまだ研究中ということですが、今後の研究成果を注視したいところです。

3.マーケティング活動の進め方の流れ

このようなマーケティング・コンセプトの変遷を踏まえつつ、ここでは現在のマーケティングの中心であるマーケティング2.0の考え方を中心としてマーケティング活動の進め方について説明します。

マーケティングの戦略・活動を決める進め方は下記の5つのステップになります。

マーケティング活動の進め方

次章からそれぞれのステップの概要を解説します。

4.自社を取り巻く経営環境の分析をする

マーケティング戦略を策定するための最初のステップは、自社のビジネスを取り巻く経営環境を調査・分析して、自社が勝てる市場機会を発見することです。
そのために役立つ分析フレームワークと調査・分析の手法をいくつか紹介します。

4-1.経営環境分析の基本「3C分析」

経営環境分析の基本となるフレームワークが3C分析です。
3C分析とは、企業を取り巻く経営環境を自社(Company)、競合(Competitor)、市場(Customer)の3つの視点で分析しようというもので、環境分析の最も基本的なフレームワークです。

経営環境分析の基本となるフレームワーク~3C分析~

自社(Company)分析では、自社の持つ経営資源や事業活動の強み、弱みを分析します。
競合(Competitor)分析では、自社と競合する企業の経営資源や事業活動の強み、弱みを分析します。
市場(Customer)分析では、自社の製品・サービスを取り巻くマクロ環境や、市場規模、市場の成長性等について分析します。

4-2.自社分析のための「バリューチェーン分析」と「VRIO分析」

自社の強みや弱みを分析するための効果的なフレームワークとして、バリューチェーン分析とVRIO分析があります。

4-2-1.「バリューチェーン分析」〜経営活動ごとの強みと弱みを分析する

バリューチェーンとは、原材料の調達等から製品サービスが顧客に届き、そのアフターフォローをおこなうまでの一連の活動を価値(バリュー)の連鎖(チェーン)として捉える考え方です。
このバリューチェーンの活動毎に、強みと弱みを調査・分析するのがバリューチェーン分析です。

例えば、小売業の標準的なバリューチェーンは下記のようになり、「商品企画」、「仕入れ」、「店舗運営」、「販売促進」、「販売」、「アフターサービス」という活動単位で強みと弱みを分析することで、どの活動が強みであり、どの活動が弱みであるかが明確になります。

バリューチェーン分析

4-2-2.「VRIO分析」〜自社が競争優位を持っているかを分析する

VRIOとは、Value(経済価値)、Rareness(希少性)、Imitability(模倣可能性)、Organization(組織)の頭文字であり、この4つの視点で内部環境を分析することで企業が競争優位性をもっているかどうかを把握するためのフレームワークです。
それぞれの視点における分析内容は下記となります。

Value
(経済価値)
企業が生み出す製品・サービスが顧客に経済的価値があると認識されているかどうかを分析
Rareness
(希少性)
企業が保有する経営資源が希少性をもっているかどうか(珍しいものであるかどうか)を分析
Imitability
(模倣可能性)
企業が保有する経営資源が模倣しやすいかどうかを分析
Organization
(組織)
経営資源を有効活用できる組織体制になっているかどうかを分析

企業が生み出す製品・サービスが顧客に経済的価値が高いと認識され、その製品サービスを生み出す経営資源の希少性が高く、他社に模倣されにくいものであり、その経営資源を有効活用できる組織体制になっている場合に、その企業は高い競合優位性をもっていることになります。

4-3.マクロ環境調査のためのフレームワーク「PEST分析」

自社のビジネスを取り巻くマクロ環境を調査するために活用できる便利なフレームワークにPEST分析があります。

PESTとは、Political(政治)、Economic(経済)、Social(社会)、Technological(技術)の頭文字をとったものであり、この4つの視点で情報を集めることにより、効率的に漏れなくマクロ環境を把握することができます。

PEST分析で調査する項目の概要は下記のようになります。

Political
政治的環境
・法律改正の動向(規制の緩和や強化、税制改正等)
・国際政治の動向(外交政策、国際的な協定等)
Economic
経済的環境
・経済状況(GDP成長率、物価、失業率、輸出入、産業構造等)
・政府の経済政策の動向
・金融動向(金利、為替、株価等)
・国際経済の動向(米国、EU、アジア等)
Social
社会的環境
・人口動態(人口、世帯数、人口構成、出生率、婚姻比率等)
・ライフスタイルや価値観の変化
・社会問題や重大事件
・治安や安全保障
・言語や民族
Technological
技術的環境
・革新的な技術開発の動向(人工知能、IoT、ビッグデータ活用等)
・特許

4-4.市場環境分析のためのマーケティングリサーチ

市場規模や市場の成長性を調べるための主な情報源としては下記のようなものがあります。

・総務省統計局「経済センサス基礎調査、活動調査
この調査結果からは、日本標準産業分類の小分類別に企業数、従業者数、売上高等を知ることができます。したがって、この調査結果から、同分類表の小分類単位までにある業界であれば市場規模は分かることになります。

その他にも、サービス産業に絞った調査として、総務省統計局「サービス産業動向調査、経済産業省「特定サービス産業実態調査」があります。

また、ニッチな産業分野や日本産業標準分類に当てはまらない産業分野については、民間調査会社の調査結果を利用することもできます。
よく利用されている調査会社として下記の2社をご紹介します。

矢野経済研究所
同社のサイトのニュースリリースのページを見ると、調査結果のサマリーを見ることができ、そこで市場規模についての情報が公開されている場合があります。
例えば、同社のニュースリリースのページで、「ゴルフ市場に関する調査を実施(2016年)」をクリックすると、調査結果のサマリーとして、「2015年の国内ゴルフ用品市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、前年比103.2%の2,591億円となった」といった情報を得ることができます。

IDC Japan
IT分野に特化した調査会社であり、例えば、「国内3Dプリンティング市場の市場規模」「CRM市場の市場規模」「ビッグデータテクノロジー/サービス市場の市場規模」などを最近では発表しています。IT分野の市場環境について調べるには便利なサイトです。

4-5.競合分析のためのリサーチ手法

競合調査については、上場企業であれば有価証券報告書や決算説明会資料などから情報を収集することが基本になります。

有価証券報告書の冒頭の、「第一部企業情報」の「第1.企業の概況」を見ると、過去5期分の売上高、経常利益高、従業員数などについて書かれていますので、まずはここで企業全体の業績推移を把握することができます。
次に、「第2.事業の状況」を見ると、事業別の売上高、営業利益などについて書かれていますので、ここで事業別の業績推移を把握することができます。

有価証券報告書の様式は統一されているので、上記の項目について競合間で横比較することが簡単にできるのも魅力です。

次に、これらの自社分析、市場環境分析、競合分析の結果から、勝てる市場機会を発見するためのフレームワークであるSWOT分析について説明します。

4-6.勝てる市場機会を発見するためのフレームワーク「SWOT分析」

市場環境分析、PEST分析、競合分析の結果から市場の機会(Opportunity)と脅威(Threat)を抽出し、VRIO分析、バリューチェーン分析の結果から自社の強み(Strength)と弱み(Weakness)を抽出して、それらの掛け合わせで勝てる市場機会を発見するためのフレームワークがSWOT分析です。

具体的には、下記のようなマトリクスに市場の機会と脅威、自社の強みと弱みを書きだします。自社の強みと弱みは、VRIO分析、バリューチェーン分析から抽出し、市場の機会と脅威は、PEST分析、市場環境分析、競合分析から抽出します。

SWOT分析

次に下記の4つの視点で戦略を考えます。

■機会×強み
自社の強みを活かして市場の機会をつかみ取るためにはどうすべきか?

■脅威×強み
自社の強みを活かして市場の脅威を克服するためにはどうすべきか?

■機会×弱み
自社の弱みを改善して市場の機会をつかむためにはどうすべきか?

■脅威×弱み
自社の弱みを改善して市場の脅威を克服するためにはどうすべきか?

ここで、最も重視すべきは「機会×強み:自社の強みを活かして市場の機会をつかみ取るためにはどうすべきか?」であり、これがマーケティング戦略の基本的方向性になります。

例えば、ホテル・旅館業というサービスについてSWOT分析した結果、外国人観光客が激増し2000万人を超えるといった市場の機会があり、自社の最大の強みとして効率的なローコストオペレーション力があったとするなら、ローコストオペレーション力を最大限に活用して外国人観光客を獲得するという方向性でマーケティング戦略を検討することになります。

5.マーケティングの根幹となるSTP

このようにしてマーケティング戦略の方向性が決まったら、次に、その方向性に沿って市場を細分化し(セグメンテーション:Segmentation)、狙うべきセグメントを絞り込み(ターゲティング:Targeting)、最も訴求すべき価値を明確に(ポジショニング:Positioning)します。

この考え方が顧客志向のマーケティング2.0の根幹となるものであり、それぞれの頭文字をとって、STPと呼ばれます。

5-1.セグメンテーション(Segmentation)

市場全体からターゲットになるお客様層 (セグメント) を絞り込むために、市場を同じような傾向をもついくつかのグループに分類することを「マーケット・セグメンテーション (市場細分化)」といいます。

セグメンテーションをおこなうことで、大規模で多様なニーズをもつ人々から成る市場を小規模なグループ(これをセグメントと呼びます)に分けることができます。
成熟社会を迎えて、消費者のニーズが多様化・複雑化している現代においては、効率的かつ効果的なマーケティングを実施するために、セグメンテーションをおこなうことはマーケティング上不可欠なものだと考えられます。

セグメンテーションのための基本的な視点には下記の4つがあります。

視点 切り口の例
地理的変数 地域、都市の規模、人口密度、気候、都市中心部などからの距離・移動時間 など
人口動態変数 年齢、世代、性別、家族構成、所得、職業、教育水準 など
心理的変数 ライフスタイル、性格・個性、好み・嗜好、価値観 など
行動変数 購買時期、利用頻度、利用場面、利用目的、購入チャネル など

例えば、人口動態変数の年齢と性別でセグメンテーションすると、
20歳代・女性、30歳代・女性、40歳代・女性、50歳代・女性、60歳以上女性
20歳代・男性、30歳代・男性、40歳代・男性、50歳代・男性、60歳以上男性
といったようにセグメンテーションすることができます。

5-2.ターゲティング(Targeting)

セグメンテーションした各セグメントのどれを狙うのかを決め、ターゲット顧客像をはっきりとさせるのがターゲッティングです。

決定する際に検討すべきなのは、下記の 3 つの視点になります。

①規模と成長性
⇒製品・サービスの目標売上を達成するために十分な人数がいるのか、今後も成長が見込めるのか?

②競争の厳しさ
⇒同じセグメントをターゲットにしている強力な競合企業はないか?

③自社の経営目標と経営資源との相性
⇒ 自社の経営目標と整合性があるのか、自社の強みとなる経営資源を活かせるのか?

したがって、自社の売上高の目標が達成できないような小さな市場規模のセグメントをターゲットにすべきではありませんし、また、市場規模が十分に大きくても、強力な競合がひしめくセグメントや、自社の強みを活かせない市場も避けるべきだと考えられます。

5-3.ポジショニング(Positioning)

ターゲットとしたセグメントの顧客に対して、競合となる製品やサービスにはない、どのような価値を提供できるのかを明確にすることがポジショニングです。

価値には機能的価値と情緒的価値の二種類があります。

・機能的価値
機能的価値とは製品・サービスの持つ機能自体が提供する価値です。例えば、ホテル業というサービスでいえば、世界最高の寝心地をもつ高級ベッドが提供する「快眠できる」という価値が機能的価値です。

・情緒的価値
情緒的価値とは、製品・サービスを保有すること、利用することにより得ることができる価値です。例えば、同じくホテル業というサービスでいえば、最高級のブランドのホテルに泊まっている優越感という価値は情緒的価値です。

このような2つの視点から、自社の製品・サービスがターゲットとするセグメントの顧客に提供できる、最も大きく、なおかつ競合には真似できない価値を明確にすることがポジショニングのポイントです。

6.マーケティング・ミックス(4P)を定めて実行する

このようにして、狙うべきセグメントと訴求する価値が決まったら、次に、そのターゲットとするセグメントに価値を提供するための具体的なアプローチ方法を考えます。
それがマーケティング・ミックスです。

マーケティング・ミックスとは、ターゲットとするセグメントに的確に価値を提供するために組み合わせて活用できる、コントロール可能で戦術的なマーケティング施策の集まりのことです。

マーケティング・ミックスにおける施策の視点は、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)という4つにまとめることができることから、それらの頭文字をとって、一般に4P戦略と呼ばれています。

マーケティング・ミックスでは、ターゲット顧客のニーズに対して、自社のポジショニングに合った製品を企画・製造し、最大の利益を獲得できる価格を設定し、最も効率的な流通網を構築し、ターゲット顧客に差別化ポイントを訴求するための最も効果的なプロモーションのやり方を検討します。

STP分析で設定したポジショニングがぶれることなく、4Pの各施策において一貫したマーケティング展開を実施することが重要になります。

マーケティング・ミックスの4P戦略

製品(Product)施策では、ターゲットとするセグメントのニーズを把握し、ニーズを満たす製品やサービスをつくりだします。
価格(Price)施策では、ターゲットとするセグメントにおいて最も大きな利益を獲得できる価格を設定します。
流通(Place)施策では、ターゲットとするセグメントに適した流通チャネルを決定し、最も効率的な流通網を構築します。
プロモーション(Promotion)施策では、ターゲットとするセグメントに最も効率的に製品・サービスの価値を伝え、販売することができる広告・宣伝、パブリック・リレーション、販売促進、営業施策等を策定します。

7.まとめ

いかがでしたでしょうか。マーケティングの定義から基礎についてご紹介しました。

マーケティングとは「広告や販売促進、営業といった狭い範囲を意味するのではなく、顧客への価値提供プロセス全体に関わるもの」です。

マーケティングを成功させるには、マーケティング2.0のSTP・4Pを基本としつつ、マーケティング3.0を取り込んだ戦略PRでマインドシェアを獲得することなども重要です。

これからマーケティングに取り組もうとしている初心者の方や、マーケティングについて復習したい方の参考になれば嬉しいです。


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