産業カウンセラー資格とは|求人や就職状況、年収や活用実態まとめ
職場や仕事の上で、心理学やメンタルヘルス知識の必要を感じている人も多いでしょう。仕事をしながら取得できるか?という点も大切です。
産業カウンセラー資格や実態を知ることによって、あなたが目指すことに適しているかの判断材料になるでしょう。産業カウンセラー資格取得を検討している方に役立つ情報を紹介します。
目次
1. 産業カウンセラーの「資格」とは?
産業カウンセラーの「資格」は、一般社団法人産業カウンセラー協会が認定する民間資格です(※)。
産業カウンセラーの「資格」は、働く人の上質な職業人生を援助し産業社会の発展に寄与することを目的として創設されました。
「働く人達が抱える諸問題を、心理的手法で自ら解決できるように援助する」専門家とされています。活動領域は、メンタルヘルスへの援助、キャリア開発への援助と、人間関係開発への援助と3つの領域が挙げられています。
2. 産業カウンセラーの「資格」を取るには~受験概要
産業カウンセラーの「資格」を取るには試験があり、受験資格が必要です。産業カウンセラー試験の受験概要と受験費用など、資格試験に関ることを紹介しましょう。
2-1. 産業カウンセラー試験の受験資格
①協会主催の養成講座を修了した者。(学歴不問。養成講座については後述します)
②大学院において心理学または心理学隣接諸科学・人間科学・人間関係学のいずれかの名称を冠する学部または専攻課程を卒業していること。
また指定科目を履修し指定単位取得した者。(受験資格判定の為の申請が必要です)今迄は一般大学卒業(学士)による受験資格もありましたが、2017年度より廃止され今後は上記の2通りになります。
2-2. 産業カウンセラー試験日程と試験場所、合格率など
①試験日程
- 受験要領発表=9月下旬(上記協会サイトにて)
- 願書申込受付期間=11月中旬~12月上旬
- 1月下旬に、学科試験と実技試験が別々の日程で行われます。(平成28年は、1月24日に学科試験/1月30日と31日が実技試験)。
- 合格発表は3月です。
②試験場所
■学科試験=札幌・盛岡・仙台・東京・横浜・高崎・静岡・名古屋・金沢・大阪・岡山・広島・松山・北九州・福岡・熊本・宮崎・沖縄
■実技試験=札幌・盛岡・仙台・東京・横浜・高崎・静岡・名古屋・金沢・大阪・岡山・松山・福岡・宮崎・沖縄
③試験方式
■学科試験=マークシート方式の筆記試験。(60問:150分)
■実技試験=カウンセリング実技や質疑応答(30分程度)
④合格率と難易度
[合格率] 2015年度の試験結果から
■学科試験=受験者数4,382名/合格者数3,359名 合格率76.7%
■実技試験=受験者数1,743名/合格者数1,229名 合格率70.5%
年度によって合格率は違いますが、学科試験70~75%前後、実技試験65~70%程度です。合格基準は公表されておりませんが、概ね6~7割以上の正答率が基準のようです。
[難易度]
ある民間の資格総合難易度ランキングでは、「偏差値49、簡単」となっています。他の国家資格等と比較すると難易度としては高くはありません。
しかし選択方式なので紛らわしい選択肢があり(所謂ひっかけ的問題など)、知識の正確さを問われます。地道な勉強が必要です。(勉強方法は後述)
2-3. 産業カウンセラー試験の受験費用
・受験料=学科試験(10,800円)+実技試験(21,600円)で、合格すると資格登録料(7000円)と年会費(10,000円)が必要です。
・資格は5年毎の更新が必要(更新料3000円+年会費10,000円)で、別途研修費用かかります。更新研修はポイント制です。資格更新の詳細は下記のサイトをご参照ください。
・受験資格取得のための、養成講座に関る費用は後述します。
2-4. 産業カウンセラーの試験対策・勉強方法
産業カウンセラー試験は学科試験と実技試験があります。学科試験は養成講座のテキストをしっかりと勉強すると6~7割はできるようです。さらに産業カウンセラー協会から「産業カウンセラー試験問題集」が出版されています。
過去問題集は受験対策として必要でしょう。出題形式を知って、引っ掛かりやすい傾向や苦手分野を把握するために有効です。勉強時間は各自の勉強方法によって違うでしょう。
①学科試験の対策
養成講座テキストの主要用語を理解し、暗記するのは必要でしょう。問題集で間違えた所はテキストを精読しましょう。経験者は自分なりの用語ノートを作ったり、単語帳を利用して工夫しているようです。
記憶は、一度覚えた事や連想事項を引き出す回数が多いほど定着します。1週間に一度まとめて7時間勉強するより、1日1時間勉強した方が記憶の効率は良いです。範囲も広く学習量も多いので、計画的な学習が大切でしょう。
②実技試験の対策
実技試験は、受験者が2名1組で、クライアント役とカウンセラー役を交代で行うロールプレイ実技です。声のトーンや話す速さ・仕草などは、実技試験において印象に大きな影響を及ぼします。
実技演習でしっかり学び、普段から落ち着いて「聴く」話すように心掛けましょう。質疑応答では、「産業カウンセラーの目的」をきちんと理解して臨みましょう。
3. 産業カウンセラーの受験資格を得るには?~養成講座について
産業カウンセラーの受験資格を得るには、協会主催の産業カウンセラー養成講座を修了するのが最も近道です。養成講座は20歳以上であれば、学歴に関らず受講できます。産業カウンセラー資格取得者の約85%は養成講座修了者です。
産業カウンセラー養成講座には通学制と通信制があるので、働く人でも取得しやすいでしょう。ここでは、養成講座修了による方法を紹介します。修士受験資格申請による方法は、下記のサイトをご参照ください。
3-1. 産業カウンセラー養成講座の申込方法
・全国に13の日本産業カウンセラー協会支部があり、希望の支部に申込ます。支部によって開催曜日やコースが違いますので、申込先支部のサイトで募集要項詳細を確認してください。申込方法は、WEBか郵送によります。申込書と受講料支払いが確認された順に受講が確定します。
・通学制と通信制では、開講時期や期間が異なります。通信制でも、16日程度の実習に参加できることが条件となります。
・養成講座の実技演習で、一定以上の評定を受けた場合は、資格試験の実技試験免除される場合があります。
3-2. 産業カウンセラー養成講座(通学コース)
①内容=理論講座:講義(36時間)+DVDによる自主学習(約9時間)/カウンセリング演習(104時間)/在宅研修(40時間):作文・小論文・対話分析/
②講座開講日=土曜コース、日曜コース、平日コースは昼間と夜間があります。通学回数は、昼間コースで約22回。夜間コースで約38回です。
③講座日程
- 受講申込受付開始=1月
- 開講時期と期間=4月開講~10月末終了予定(約7ヶ月)
- 修了条件は、欠席が19時間未満であること。在宅研修課題を全て提出し、A~D評価のうちA・B以上の評定を受けることとされています。
④費用=226,800円(教材費含む)
3-3. 産業カウンセラー養成講座(通信コース)
①内容=理論学習(テキストと添削による在宅学習)/カウンセリング演習(104時間:16日)とレポート提出/DVDによる学習(約9時間)
②講座日程
- 受講申込受付開始=8月
- 開講時期と期間=11月開講~9月末終了予定(約12ヶ月)
- 実習開催日=カウンセリング演習は年間16日程度で。各支部により指定の開催日・場所があります。通信制講座の演習実施会場・曜日については下記のサイトをご参照ください。
③費用=205,000円(教材費含む)
3-4. 教育訓練給付制度を利用して、産業カウンセラー養成講座を受講する
産業カウンセラー養成講座は、厚生労働大臣の指定する「教育訓練給付制度」の指定講座です。一定の要件を満たしている支給対象の人は申請すると、教育訓練費のうちの20%に相当する額(上限10万円)が支給されます。受講終了後、1ヶ月以内にハローワークに申請手続が必要です。
[支給対象者の条件]
下記のいずれかの条件に該当し、指定講座修了することが条件です。
①在職者中の人=雇用保険の一般被保険者である期間が3年以上であること。(初回受給の場合は、1年以上で可能です)
②離職者した人=雇用保険の一般被保険者であった期間が3年以上であること。離職した日(般被保険者資格喪失の日)から、受講開始日までが1年以内であること。
(注)一般被保険者は65歳の誕生日前日に高年齢継続被保険者に資格切り替わります。そのため、受講開始日が66歳の誕生日前日以降の場合は支給対象になりません。教育訓練給付制度は、前回の受給から3年以上経過していることなどの要件もあります。詳細は下記のハローワークのサイトをご参照ください。
3-5. 養成講座受講希望者のための無料体験講座
産業カウンセラー養成講座の受講を検討中の方のために、無料体験講座が開催されています。無料体験講座ではカウンセリングの基礎となる「傾聴」を中心に、養成講座の紹介をします。
所要時間は約4時間程度です。全国各地で開催されており、日時は会場によって異なります。無料体験講座教室・開催日・申込方法については下記のサイトをご参照ください。
4. 産業カウンセラーの「資格」取得後の実態
産業カウンセラー資格を目指す人は、在職中の方が大半です。事務職や管理職や総務人事部、医療関係などで働いている人が取得するケースが多いようです。
資格を目指した動機は「カウンセリングの勉強をしたい」(42%)、「広く心の援助をしたい」37%、「カウンセリングの仕事がしたい」(27%)、「職域を拡大したい」(26%)などとなっています。カウンセリングを学び職場や仕事に活かしたいという動機が強いようです。
・資格取得を検討中の方は、産業カウンセラー資格を取得した人達がその後にどのように資格を活かしているか?気になりますね。産業カウンセラー協会の実態調査から見てみましょう。
4-1. 資格取得者全体の活用実態
①資格取得によって培ったスキルを活かしているか?
- 資格を大いに活用して活動している=21.1%
- まぁ活かして活動している=39.2%
- 活用していない=39%
資格取得者の6割は、何かの形で習得したスキルを活用しているようです。その一方、活用していない人も4割ほどいます。資格を活かすには、何のために資格を取るか?自分の職場で活かせるかを考えることが大切でしょう。
②資格で習得したスキルを業務に活かしているか?(複数回答)
- 常勤雇用の主たる業務で活かしている=24.8%
- フリーランス(契約やパート)で活かしている=14.1%
- 常勤雇用の従たる業務で活かしている=10.5%
- 自営で活かしている=3.7%
- プライベートで活かしている=20.1%
- ボランティアで活かしている=10.6%
勤務先業務や自営、フリーランスなど、自分の主たる業務の部分で資格を活かしている人は、4割程度いると読み取れます。
③資格取得して「カウンセラー」として活動しているのは?
- 企業や団体で「カウンセラー職」としての勤務に就いているのは、全体の15%ほどです。(女性15.9%、男性14.7%)
- 自営で資格を活用している人も3.7%おり、産業カウンセラーとして活動していると考えられます。
「カウンセラー職」かどうかは別として、回答者全体の2~3割程度は産業カウンセラーとして活動しているようです。
多くの人は、カウンセラーとして活動しているわけではないけれど、資格習得によるスキルを職場の人間関係やプライベートに活かしているようです。勤務先に活用できる場や部署があるかが、活用度合いのポイントのようです。
4-2. 産業カウンセラーの年収・就労形態
回答者のうち、「カウンセラー職」として勤務している人の年収と就労形態を見てみましょう。
①年収
- 100万円未満(13%)
- 100~200万円未満(17%)
- 200~300万円未満(24%)
- 300~400万円未満(22%)
- 500~600万円未満(6.1%)
- 600~700万円未満(3.8%)
- 800万円以上(2.2%)
100万円未満というのは、非常勤または週に数日という契約で働いていると考えられます。200~400万円がボリュームゾーンです。1000万円以上という人も1.4%います。年収は就労形態によって違うようです。カウンセラー職として働く人は、契約などが多いようです。
②就労形態
- 契約社員(44%)
- 正社員(22%)
- 非常勤・パート(27%)
- 経営者(4%)
となっています。回答者全体では、正社員が約半数でしたが、「産業カウンセラー」として勤務する場合は契約社員が多くなっています。ハローワークなどで契約社員として働いている人が多いようです。
4. 産業カウンセラーのなり方、働き方
どの資格も同じですが、資格を取っただけですぐに就職や転職につながるものではありません。臨床心理士は大学院修了が条件であるのに対し、産業カウンセラーは1年程度の勉強で取得できる資格です。
資格取得がスタートと考えた方が良いでしょう。実際に産業カウンセラーとして活動している人は、多くの実績を積み資格取得後も研鑽を重ねています。産業カウンセラー資格を取得して、「産業カウンセラー」として活動するためにはどのようにするとよいのでしょうか?
4-1.「産業カウンセラー」として活動するために必要なこと
・カウンセラー職として企業や団体に勤務するにしても、フリーランスで仕事をするにしても実務経験が必須条件です。企業の人事部や人材派遣会社勤務などです。まずは勤務先で実績を積みましょう。総務部や人事部に配属希望を出すのも方法でしょう。
・関連する資格を取る方法もあります。協会調査では「カウンセラー職」として勤務している人の約半数は「キャリアコンサルタント」や「シニア産業カウンセラー」の資格を取得しています。
どんな資格を取ったとしても、カウンセラー職に必要なのは、専門知識と実務経験です。産業カウンセラーの活動領域は3つありますが、企業・団体で需要が多いのはキャリア開発とメンタルヘルス領域でしょう。資格取得後に研修に参加するなど、個々の研鑽が欠かせません。
4-2. 働き方、求人例
協会の実態調査によると、産業カウンセラーとして活動している人の働き方は、ハローワークやジョブカフェなどが圧倒的に多く(42.8%)、次いで企業内の相談室(18.4%)、自治体などの相談室(15%)となっています。求人例を見てみましょう。
[産業カウンセラーを資格要件とする求人例]
・ハローワーク勤務=雇用形態:契約/内容:就労支援、職業相談、ハローワーク業務/報酬:月額27万円/条件:キャリアコンサルタントや産業カウンセラー資格保持者。人事労務管理の経験者。
・大学の就職課勤務=雇用形態:非常勤/報酬:時給1550円(実働6~7時間程度/日)/内容:学生の就活支援全般(セミナー、就職サポート、履歴書指導、相談対応など)/条件:キャリアコンサルタント、産業カウンセラー資格保持者。人事採用の実務経験。
・EAP(従業員支援プログラム)提供企業勤務=雇用形態:非常勤/報酬:時給1500円。13~22時勤務/17~22時勤務
/内容:クライアント企業での社員のカウンセリング(面談・電話相談)など。/条件:カウンセリング経験者。認知行動療法経験優遇。臨床心理士・産業カウンセラー(シニア産業カウンセラー尚良い)、精神保健福祉士資格保持者。
以下の転職エージェントではカウンセラー職や活かせる求人を多く扱っています。
・【リクルートエージェント】
・パソナキャリア
・doda
4-3. 産業カウンセラーの職業紹介
産業カウンセラーとして活動する場合、どのような所で仕事を探すとよいのでしょう?求人情報について幾つか紹介します。
①産業カウンセラー協会産業カウンセラー無料職業紹介所では、ハローワークの認可事業として無料職業紹介を行っています。求人情報には限りがあり、希望者全員に紹介されるわけではありません。
[手続きの方法]
本人が直接来所して求職票に記入のうえ提出、または郵送で申込(郵送の場合、求職票は下記のサイトからダウンロードできます)
・送付先
〒105-0004東京都新橋6-17-17御成門センタービル6F 産業カウンセラー無料職業紹介所担当
産業カウンセラー協会産業カウンセラー無料職業紹介所
②ハローワーク窓口や、ハローワークの求人情報サイトもあります。
③その他、民間の求人情報サイトは色々あります。
5. まとめ
産業カウンセラー資格取得者の、約6割は資格で習得したスキルを職場や人間関係に活用しています。それぞれの業務や立場によって活用の仕方も違うでしょう。何のために資格を目指すかを考えることが資格活用のポイントといえます。
産業カウンセラー資格取得を目指す人は在職者が多く、スキルアップや職域を広げるために取得する人が多いようです。現在の業務が人事・労務や対人関係などに関る人は、資格取得する意義は大きいでしょう。
資格を目指すには養成講座が近道です。通学と通信制があり、支給要件を満たすと教育訓練給付金制度も利用できます。働く人が取得しやすい資格と言えるでしょう。
産業カウンセラーとして活動するためには、資格だけではなく実務経験と取得後の勉強が必要です。
産業カウンセラー資格習得によって得られる「傾聴」のスキルや心理学の知識は人間関係能力を高め、職業人生を豊かにする能力と言えるでしょう。