Webディレクターとは?仕事内容や就職先・なるための方法まとめ
「何でも屋」や「雑用係」と称されることもあるwebディレクター。
彼らの仕事を正確に理解している人はほとんどいないのではないでしょうか。webディレクターと名乗っている本人たちでさえも「webディレクターって何やってるの?」と聞かれて言葉に詰まってしまうことさえあるほどです。
そんなちょっと謎めいたwebディレクターの仕事をご紹介しましょう。
1. webディレクターとは
1-1. webディレクターの役割
webディレクターの仕事を一言であらわすならば「webサイト制作現場の指揮官」といえるでしょう。
webサイトの制作には、依頼主であるクライアントのほかにデザイナーやプログラマー、ライターといった制作スタッフなど数多くの人が携わります。
各分野のプロフェッショナルが知恵を出し合いながらひとつのゴールを目指していくのですが、それを取りまとめるのがwebディレクターの役割です。
ですから、webディレクターはwebサイトの構築に関わるすべてを把握しておかなければなりません。
webサイトの企画や設計、制作、運用にいたるまで全体をくまなく確認しながらプロジェクトを問題なく遂行していけるように指示や調整をくり返していくのです。
1-2. webディレクターの仕事内容
webディレクターの仕事領域は所属する会社の業種や業態などによって変わってきます。ここでは、クライアントである企業からwebサイトの制作を依頼される一般的な制作会社でのwebディレクターの仕事の流れをご紹介しましょう。
まず、webディレクターはクライアントからwebサイトを作成する目的や現在抱えている問題点などを聞きだしたうえで、どのようなwebサイトを制作するべきか企画や構成を練り上げます。
その後、掲載しなければならない情報を整理しながらwebサイトを設計し、企画意図を伝えるためのプレゼンテーションまで行います。
その際に提示する見積もりを用意するのもwebディレクターの大切な仕事です。
無事に案件を受注できたらプロジェクトに最適な制作スタッフを選び出し、webサイト制作の意図などを全員に共有してから制作にかかります。
webサイトの規模によって制作期間は異なりますが、スケジュールが遅れないように、また目指すゴールが途中でぶれないように指揮をとり続けなければなりません。
そうしてクライアントの最終チェックを受けることができたらwebサイトを公開します。
その後も当初の目的を達成できているか日々チェックしながら、必要に応じて更新していくのもwebディレクターの大事な役割です。
たいていは、このような案件をいくつか並行して担当することになるでしょう。
1-3. webディレクターには主に4タイプある
webサイト制作全般に携わるwebディレクターには、幅広い知識やスキルが求められます。とはいえ、すべてに関してプロフェッショナル並にこなせる必要はありません。
webディレクターにはそれぞれ得意分野があり、それによって主に4つのタイプに分けることができます。
●営業系ディレクター
クライアントと交渉をする営業に近い立場にいながら、制作の指揮もとるディレクターです。すぐれたコミュニケーション力を活かし、クライアントの要望を的確に聞き取ることを得意とします。
●企画系ディレクター
豊かな発想力を武器にユーザー(消費者)の心をつかむプランニングを得意とするディレクターです。情報収集や分析といったマーケティング能力の高い人が多いのが特徴です。
●デザイン系ディレクター
デザインセンスが高く、アートディレクターと呼ばれることもあります。デザイナーとして経験を積んでからwebディレクターとなるケースがほとんどです。
●システム系ディレクター
システムエンジニア出身など、プログラミング能力にすぐれたテクニカルディレクターです。新しい技術にも精通しており、複雑な動的サイトを設計するスキルも備えています。
これからwebディレクターを目指すのであれば、自分はどのタイプに適しているのか考えておくとよいでしょう。
1-4. webプロデューサーとの違い
webディレクターとしばしば混同されるのが、webプロデューサーです。制作現場を取り仕切るのがwebディレクターとしたら、webプロデューサーはプロジェクト全体を統括する立場といったらわかりやすいでしょうか。
webディレクターよりさらにクライアントに近い存在で、プロジェクトの責任者としてクライアントとの交渉に臨みながら費用の管理を含めたマネジメントを行います。
ただし、webディレクターがプロデューサーを兼任する機会も少なくありません。
2. webディレクターに求められるスキル
実際にwebディレクターとしてやっていくために必要となる代表的なスキルを具体的にご紹介していきましょう。
2-1. コミュニケーションスキル
さまざまなたぐいの人を調整し合い指示をだすwebディレクターに絶対に欠かせないのがコミュニケーション能力です。
制作を進めていくうちに関係者の間で意見が食い違ったり制作スタッフから不満の声が聞かれたりすることも少なくありません。
そのようなときにも、チーム内の信頼関係を壊さずに全員のモチベーションをいかに保ち続けることができるのかがwebディレクターの腕の見せどころです。
プロジェクトを成功させるために広い視野でチームを眺めつつ、個人の状態にまで気を配ってホスピタリティあふれる対応のできる人がwebディレクターに向いているでしょう。
2-2. 企画・提案スキル
おもしろい企画を考えられたらいいというわけではありません。
クライアントの要望をしっかりと汲み取り、課題を見つけてwebサイトで解決できる企画を提案できる能力が必要ということです。
ときにはクライアントに苦言を呈さなければならないでしょうし、自分の企画に納得してもらうために説明をくり返す必要もあるでしょう。
ただwebサイトを作り上げるだけでは、有能なwebディレクターとはいえません。クライアントやユーザーのニーズを満たすものを完成させなければならないのです。
SNSや動画広告、リスティング広告、SEOといったwebマーケティング手法を駆使できる知識も必要となります。
特に今後は、webサイトだけではなくテレビやラジオ、新聞、雑誌などのマスメディアを絡めた企画を考えられるwebディレクターが求められるでしょう。
2-3. プレゼンテーションスキル
案件を受注するのもwebディレクターの重要な役目です。
そのためには、だれが見てもわかりやすい資料を作成する能力と、相手の関心をひいて納得させるだけのプレゼンテーション能力が必要とされます。
日本人は特にプレゼンテーションを苦手とする人が多いですが、webディレクターになると避けては通れないでしょう。
練習を重ねて経験を積んでいくうちに、慣れていくしかありません。プレゼンテーションを得意とする著名人の話し方などを研究しておくことをおすすめします。
2-4. サイト設計スキル
ユーザーが操作しやすいナビゲーションやサイトの構造を考えられる能力も必要です。いくら内容がすばらしくても、ユーザーがストレスを感じるようなwebサイトは認められません。
現在はパソコンだけでなくスマートフォンやタブレットなどデバイスも多様化していますから、それぞれの特徴に合わせて設計できるスキルが求められます。
2-5. 制作進行管理スキル
プロジェクトを成功させるためには予算を意識しつつも現実的なスケジュールを作成し、進捗状況を管理しながら納期までに完成させなければなりません。
途中で変更が発生したり承認がスムーズに得られなかったりといったイレギュラーが起きることはしょっちゅうで、スケジュールどおりになんの問題もなくプロジェクトが完了することなど滅多にないのです。
あらゆるリスクを想定したうえで調整していく能力がwebディレクターには必要となります。
2-6. 制作スキル
webサイトを制作するには、デザインやコーディング、プログラミング、ライティング、画像や音楽の編集など多様な技術を用います。
とはいえ、webディレクターがこれらすべての専門的な知識を要するのは無理なもの。それぞれにプロフェッショナルな担当者がいるので、的確な指示や簡単な修正ができるくらいで十分です。
ただし、制作者に丸投げしてはいけません。制作者と意義のある意見交換ができるくらいの知識を持ち合わせていないと正確な指示はだせませんし、制作者からの信頼も得られないでしょう。
2-7. 調査・分析スキル
webサイトの制作は公開したら終了ではありません。
実際にユーザーの目に触れてからが勝負ですから、どのくらいの訪問があり、サイト内でユーザーがどのように行動しているのかを調査・分析しながら改善をくり返していきます。
そのためにアクセス解析ツールを使いこなせることはもちろんのこと、競合サイトの動向や世の中の流れをチェックしながら戦略を立てられる能力は必須です。
Webディレクターに必要なスキルは「Webディレクターのスキル|プロになる為に身につけたい17の能力」でもご紹介しています。
3. webディレクターの主な就職先
それでは、webディレクターとして働くためにはどういった会社に就職すればいいのでしょうか。
ひとくちにwebディレクターといっても、所属する会社の業態によって役割が微妙に変わってきます。自分の希望するwebディレクター像は次のどのタイプに近いのか考えてみましょう。
3-1. 広告代理店
広告をだしたい企業とメディアを結びつけるのが主な業務ですが、企画や制作も行っています。
商品やサービスを販売促進していくためにwebサイトを含めたメディアを活用したプロモーション企画を提案して制作を進めていくので、マーケティングに強い人が向いているでしょう。
3-2. web制作会社
企業や広告代理店から依頼を受けてwebサイトを制作します。
すでに企画が決定した案件の制作を受ける場合と企画提案から携わる場合などさまざまですが、いずれにせよ制作全般を任されることがほとんどです。
クリエイターにより近い立場のwebディレクターとなります。
3-3. システム開発会社
プログラミングを駆使した動的コンテンツなどの制作を得意とした会社です。web制作会社だけではまかないきれない複雑なシステム構築などを依頼されることが多いのが特徴といえます。
そのため、webディレクターもさまざまな技術に関する知識が必要となります。
3-4. サービス企画会社
コミュニティサイトやゲーム配信といった自社サービスを展開している会社です。コンテンツの企画からプロモーション、サイトの設計・制作などwebディレクターは幅広い業務に携わります。
クライアントから依頼されたwebサイトを制作するよりも自由度は比較的高いといえるでしょう。
4. webディレクターになる方法
webディレクターになるにはどういったルートがあるのでしょうか。
考えられるのは次の3パターンですが、即戦力が求められる職種なのでまったくの未経験者がwebディレクターとして採用されるのは難しいのが現実です。
ただし、能力次第では経験に関係なくwebディレクターになれる可能性は十分にあります。
4-1. 制作者として現場を経験する
デザイナーやプランナー出身のwebディレクターは数多く存在します。
webディレクターは制作チームを指揮する立場ですから、実際に現場で働いていた経験があるほうが有利なのは当然のこと。
まずは、制作スタッフとして業界に入って経験を積むとよいでしょう。その際に、webディレクターの視点にたって業務に取り組むことが大切です。
4-2. 専門学校などで学ぶ
学校で勉強したからといってwebディレクターになれるとは限りませんが、ディレクションを担当してチームでwebサイトを制作したという実績をつくることはできるかもしれません。
専門学校卒が採用ポイントにはならないでしょうが、小さな会社であればwebディレクターとして雇ってもらえるチャンスは期待できます。アルバイトや契約社員など正社員以外での募集も探してみるとよいでしょう。
4-3. 資格を取得する
webディレクターに資格は不要ですし、正直いって就職には役に立ちません。資格よりも経験や能力が重視される世界だからです。
しかし、基本的な知識を身につける目的として次のような資格の勉強をしておくことはおすすめします。
web制作の工程管理からサイトの企画、設計、分析、集客法などwebディレクターに必要な専門知識を学べる内容となっています。
webディレクションに必要となる知識を身につけるだけでなく、それぞれの業務を行う意味まで理解できるよう実例から疑似体験することができます。
戦略やマーケティングをはじめとした経営全般からセキュリティ、ネットワークなどのIT知識、プロジェクトマネジメントの知識など幅広い分野を総合的に学べる国家試験です。
世界的なweb標準に対応したデザインやコーディング能力などwebクリエイターに必要な知識を身につけられる試験です。
5. webディレクターの職業事情
5-1. webディレクターの年収
会社の規模などによって異なるので一概にはいえませんが、webディレクターの年収は幅広く、400万~1000万円が相場とされています。
実力主義の世界ですから、年齢や性別に関係なく、能力さえあれば年収1000万円も夢ではないでしょう。そのいっぽう、40~50代になっても月収が20万円代ということもあり得ます。
収入をあげるためには貪欲に経験と知識を身につけて、腕を磨くしかありません。
5-2. webディレクターの将来性
webディレクターの需要は年々増え続けています。
web業界は流行の移り変わりも早く、次々と新しい技術も開発されますから、どのような状況においても柔軟かつスピーディに対応していけるwebディレクターは重宝されるでしょう。
とにかく実力がすべてですから、実務経験を積んでいけば自ずと可能性は広がっていきます。転職をくり返しながらキャリアアップしていく傾向が大きいのもwebディレクターの特徴です。
将来的にwebプロデューサーになる人が多いので、マネジメントに深く関わりたいと願う人はそのような道を目指すことも十分に可能でしょう。
もちろん、webディレクター業を極めていくことだってできます。
webディレクターの仕事は多岐に渡るゆえに、自分の得意分野に特化して強みをだしていきやすいので、他の職種よりも自在にキャリアパスを切り開いていけるのです。
6. まとめ
人や情報に対して常にアンテナを広げ、重要なポイントを的確にキャッチしてフレキシブルに対応できるセンスがあればwebディレクターとして頭角をあらわすことができるはずです。
好奇心に満ちあふれ、多種多様な人たちと接しながらひとつのものを作り上げていくことに喜びを感じる人がwebディレクターに向いているでしょう。