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記事更新日:2017年03月18日

いま多くの基幹業務がERPシステムで運用されています。
でもERPについて具体的に内容を知らない方は多いのではないでしょうか。

今回はERPを導入すると、企業にどのような価値をもたらすのか?
導入プロジェクトはどう進めるのか?
現在のERPマーケットの状況や将来性などをご紹介します。

1. ERPとは何か

1-1. ERPの元々の意味

ERPはEnterprise Resource Planningの略で、元々は企業内での資源の有効活用の手法を意味します。歴史的には、最初に生産コストの削減を目的としたMRP(Materials Requirements Planning)が生まれ、それを企業経営全体に拡張してERPという概念が生まれています。

ERPは企業内のヒト、モノ、カネ、情報を適切に配分して有効活用する事を目指します。

1-2. ERPパッケージとは

ERPパッケージとは、ERPを実現するパッケージソフトウェアです。多くの会社で共通で使えるBest Practice(理想的で効率化されたビジネスプロセス)を実現するよう設計されています。

会計、在庫管理、生産、販売、購買等の複数の業務モジュールで構成され、企業内のデータを一元管理し、企業経営の効率化を助けます。

現在では、ERPと言うとERPパッケージの事を指す事が多くなっています。この記事でも、以下ERPという言葉をERPパッケージの意味で使います。

1-3. ERPのメリットとは

ERPは、比較的高価なソフトウェアです。ライセンス料だけでも、中規模な会社で数千万、大規模な会社となると億単位の金額がかかります。それでは、この高価なERPにより、どのようなメリットがもたらせるのかを見ていきましょう。

1-3-1. 情報の一元管理ができる

まず、第一のメリットとしては、情報の一元管理があります。ERPを導入していない会社では、通常、販売管理システム、在庫管理システム、会計システム等、複数のシステムが独立に稼働し、データやマスタの粒度もシステムによって異なっています。

しかし、ERPを導入すると、全てのデータが1つのERPシステム内で一元管理され、インターフェイスを実行しなくても、例えば販売管理モジュールで売上伝票を登録すると、即時に会計モジュールで売上金額が更新されます。このためリアルタイムでのデータ分析を可能となり、企業の意思決定のスピード化が実現できるのです。

1-3-2. 海外の拠点への導入が容易になる

Global ERPと呼ばれる外国産のERPは、海外拠点を含めた導入の際にメリットを発揮します。各国の税法、商習慣、法律要件を実現する機能を開発するには手間がかかります。しかしGlobal ERPであれば、標準でこれらの機能が実装されている事が多く、要件定義や開発の工数を削減する事ができます。

1-3-3. ビジネスの変化や法制度の変更への対応が容易になる

ERPベンダーは、ビジネスの変化や法制度の変更を自社の製品に反映させます。例えば、税法で固定資産の減価償却方法が変わるとパッチで新しい計算ロジックをリリースする、マイナンバー方が施行された際は、その対応のための機能をリリースする、等の対応がされます。

ERPを利用せずに自社開発のシステムを使っていると、この様な制度の変更があるt、自社で追加開発を行わないといけませんが、ERPを使用していると、ベンダーからパッチ等を適用する事により、対応機能が使え、保守管理が容易になります。

1-4. ERPのデメリットは何か?

以上、上記ではERPメリットを見て来ましたが、ERPのデメリットとしては、どの様なものがあるのでしょうか?

1-4-1. ライセンスおよび保守費用が高い

まず費用が高額である事が挙げられます。導入の際は、高額のライセンス料に加えて、一般的なIT技術者よりも単価の高いERPコンサルタントを雇う必要があり、導入後に払う保守サポートの費用も安くはありません。

更に、導入後何年かすると、アップグレードをする必要があり、トータルのコストは高くなりがちです。そのため、導入する際は、トータルコストを計算し、導入のメリットがそのコストを上回るかどうかを分析する必要があるでしょう。

1-4-2. 標準機能で企業固有の業務がカバーされない可能性がある。

ERPで標準機能として用意されているのは、多くの会社で共通のビジネスプロセスです。そのため、会社特有の業務については、ERPの外で行う、アドオンで開発をする等の対応を行う必要があります。これらの対応はコストを増加させますし、パッチ適用や将来アップグレードの際の足かせとなります。

そのため、ERPを導入する企業は、自社の業務が標準機能でどの程度カバーされるのかを評価し、あまりに標準機能からはみ出るビジネスプロセスがある場合は、BPR(Business Process Restructuring)を行うか、ERP以外のソリューションを考える必要があります。

1-5. 主要ERPパッケージ

それでは、主要なベンダーのERPパッケージを見ていきましょう。

1-5-1. SAP

SAPは大企業に圧倒的なシェアを誇るERPです。Globalでも日本国内でもERPマーケットのシェア第一位です。世界中の名だたる大企業を顧客としているため、それらの企業の業務ノウハウをベストプラクティスとしてパッケージの機能に取り込んでおり、SAPを導入すると、業務プロセスの最適化できるメリットもあります。

又、信頼性が高く監査への対応が楽になる、多言語や多くの国の要件もサポートしているという利点もあります。最新バージョンのSAP S/4 HANAはインメモリーデータベース上で高速のパフォーマンスを実現し、Fioriという直観的に理解できるUIにより、ユーザーにとっての使いやすさ、も実現しています。

又、SAP社は近年、データベース(In Memory ComputingのHANA DB)、クラウド版経費精算ソフト(Concur)、オムニチャネル実現のソリューション(Hybris)等ERP以外の製品をリリースし、多角化の傾向を見せています。

1-5-2. Oracle EBS

Oracle EBSは、それぞれ別ライセンスの複数モジュールにより構成されています。買収を行った製品もEBSを構成するモジュールの1つとなっており、例えばピープルソフトは優れたHRとCRMモジュール、JDエドワーズは優れた製造管理モジュールとして提供されています。

又、EBSはデータベースベンダーとして有名なOracle社の製品であるため、ITアーキティチャが優れており、セキュリティー対策も万全という評価を得ています。

1-5-3. Dynamics AX

あまり広く知られてはいませんが、Microsoft社は4つのERP(Dynamics AX, Dynamics Nav, Dynamics GP, Dynamics SL)を販売しています。

そして日本語版がリリースされているのはDynamics AXのみです。Dynamics AXは元々、デンマークのApxpta社という会社の製品でしたが、マイクロソフトに買収され、マイクロソフトのビジネス・ソリューション群の1製品となりました。

SAPやOracle EBSと比べると比較的小規模の会社をターゲットとしているため、機能数は少なめですが、その分製品を理解しやすい、導入が容易、カスタマイズが容易、等の評価を得ています。

最新版のDynamics AX 2012ではリボンUI等が取り入れられ、マイクロソフト製品になじみ深いユーザーにとって使いやすいデザインとなっています。

2. ERPパッケージ導入の方法

それでは次にERP導入プロジェクトがどの様に進むかを見ていきましょう。

以前と比べてERP導入プロジェクトは短期化しています。10年程前では、大規模会社へは2~3年かけて導入する事も珍しくありませんでした。

しかし、現在では、大企業でも1年未満で導入する事がほとんどです。これは、製品自体の機能アップで導入が容易になった事、導入のノウハウが溜まってきた事、が理由と言われています。

2-1. パッケージ選定

ERPを導入する事が決まった場合は、まずどのERPパッケージを導入するか、という選定が行われます。パッケージ選定では、価格はもちろん、サポート体制、標準機能の範囲が選定基準となります。

標準機能の評価は通常、その会社のクリティカルなビジネスプロセスをリストアップし、それらが各パッケージで実現できるかどうかのマトリックスを作成して、評価が行われます。

2-2. Fir&Gap

パッケージが選定されると次にFit & Gapと言われるフェーズに入ります。ここでは標準機能のみでプロトタイプを作成し、それをビジネスのキーユーザーに触ってもらい、フィードバックをもらいます。

機能が足りない部分は、現在のビジネスプロセスを変えるか、又はアドオンプログラムの開発を行います。ここで多数のアドオンプログラムの開発を決めてしまうと、予算も膨らみますし、ベンダーサポートの対象外となり保守費用がかさみ、かつアップグレードも難しくなりますので、注意が必要です。

2-3. 開発

開発フェーズでは、アドオンプログラムの開発、及び周辺システムとのインターフェイスを開発します。又、データ移行用のプログラムを開発する場合もあります。

2-4. テスト

こちらは通常のシステム開発と同様に、単体テスト、統合テスト、UAT、移行テストを行います。平行してユーザートレーニングも行います。

2-5. データ移行/本番機切り替え

テストの結果、Go-Liveできると判断された場合は、データ移行、本番機切り替えを行います。通常は数日間ビジネスを止め、本番機の切り替えを行います。又、データ移行が容易なため、年末に切り替えを行う事が多いです。

3. 現在のERPマーケットの状況

現在のERPマーケットは、飽和状態にあると言われます。大規模の顧客は、ほぼ導入済みです。実際に、ERPベンダー最大手のSAPはフォーチュン500企業の85%で導入されており、市場は成熟状態にあると言えます。

そのため、各ERPベンダーは、まだERPの導入が少ない中小企業に簡易版ERP(大企業向けERPと比較すると機能は少ないが、その分価格が安い)を売り込む、導入済み企業のスケールアップを勧める(例えば、会計と販売管理のみERPを使っている企業に購買管理もERPを使う事を薦める等。

マイナンバー法は、ERPの使用が少なかった人事領域のERP化推進の追い風となった)、等の努力を行っています。

4. 今後のERPのトレンド(2つのクラウド化)

少し前までは、ERPを導入する際はオンプレミス環境で、永久ライセンスを購入するのが常識でした。しかし、クラウド・ネィティブの現代では、この常識が変わりつつあり、2つのクラウド化が起こっています。

4-1.プラットフォームのクラウド化

現在、多くのERPの本番システムがクラウド環境で稼働しています。
以前は、基幹システムをクラウド環境に置く事は、セキュリティー上考えられない、というのが常識でした。

しかし、現在はメジャーなクラウドベンダーが、堅強なセキュリティーの対策を講じ、複数のセキュリティー認証を取得しているため、逆にクラウド上に置いた方が安全で監査対応が楽、と認識が変わってきています。

又、ERPは通常、夜間にCPUを必要とする重たいジョブを実行したり、決算処理で一時的に大量のキャパシティーを必要とします。そのため、クラウドシステムで必要な時にキャパシティーを増加する方が、運用コストが低く抑えられる場合もあります。

この様な理由で、より多くのERPが現在では、クラウド上で稼働しています。

4-2. ソフトウェアのクラウド化

現在、多くのベンダーがクラウドERPをリリースしており、初期費用なし、月額費用のみで手軽に使い始める事ができます。ERPは高価な買い物、とためらっていた中小企業を中心に顧客が増えているようです。

又、大企業でも小規模の海外拠点は、ビジネスが不安定で将来の見通しが立たないため、巨額のIT投資ができません。そのため、初期導入費用が安く、「失敗のコスト」が低いクラウドERPを選択する事が増えています。

まとめ

今回は、ERPの全体像について見て来ました。クラウド版がリリースされても、ERPはやはり相対的には高価な買い物です。そのため、導入を決める前には、ERPの導入が自社のビジネスに価値をもたらすか、を考察して判断を行う必要があるかと思います。

又、今後のITのトレンドに応じて、ERPの役割が変わって行く事が予想されますので、その変化にも注目をすべきかと思います。

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記事更新日:2017年03月18日

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