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記事更新日:2017年05月22日

人工知能という単語は長らくビジネスとは無縁のものでした。それこそ大学や研究所の報道発表で耳にする程度で、多くの人がSF世界の話だと思っていたでしょう。

しかし、それが今変わりつつあります。人工知能の技術が実用段階に達し、ビジネス界に進出してきたのです。人工知能とビジネスはどう関わっていくのでしょう。

今回は人工知能のビジネスについてまとめました。

1.人工知能の開発と共に広がりを見せるビジネス

1-1.機械学習とディープラーニング

人工知能は「人工的に作られた(人間に近い)知能」という意味を持った単語ですが、生物界における知能は学習によって得られることが普通です。

しかし、非常にシンプルな人工知能の場合は人間が全てのプログラムを行い、自ら何かを学ぶことはありません。機械は人間が作ったマニュアルに沿ってプログラムを実行するだけの存在なのです。

こうしたプログラムを人工知能と読んで良いのか微妙なところではありますが、それでも人間のような振る舞いをさせることは可能でしょう。ただ、このレベルの人工知能をビジネスに活用していくのはかなり難しいです。

そこで考え出だされたのが機械学習と呼ばれる人間のように機械が学ぶための技術でした。
猫を見てそれを猫だと認識させるためには、猫の特徴を人間が教えるのではなく、機械自ら沢山の猫の絵を見て学ぶのが現実的です。機械自らが猫の特徴を学習できるようになれば、同じ要領で犬や鳥の特徴を学び、認識できるようになります。それを達成するために様々な機械学習の手法が考案され、大きな成功を納めたのがディープラーニングという手法です。

ディープラーニングは人間の脳にあるニューラルネットワークを参考に作られている事が知られており、非常に高い学習能力を持っているのが特徴です。
しかし、ニューラルネットワークを使ったシステム自体が他の手法に比べて特別画期的だったわけではありません。ディープラーニングと同様のニューラルネットワークを使った手法は他にも沢山ありました。

ディープラーニングが成功したのは、ひとえに膨大な情報がインターネットを通じて手に入るようになったからです。

1-2.ビッグデータの活用と人工知能の進化

ディープラーニングで使われているニューラルネットワークは潜在的には非常に優れた学習能力を持っていました。
にも関わらず、何十年という間、思うような成果が上がらなかったのは、学習に必要な情報量があまりにも膨大だったからです。

その壁を壊したのが計算能力の進歩とインターネットの登場です。インターネットを通じて膨大な情報が簡単に手に入るようになり、それを処理する事ができるようになったのです。

膨大な情報から効率的に学習する技術をニューラルネットワークに取り入れることにより、遂にディープラーニングが完成します。

こうしたネットワークインフラを介して手に入る膨大な情報はビッグデータと呼ばれ、ビッグデータは人工知能をビジネスに活用していく上で必要不可欠な情報となっています。

Googleであればユーザーの検索履歴やインデックスされたウェブサイトの情報がビッグデータにあたりますし、Amazonや楽天であればユーザーの膨大な購買情報が活用可能なビッグデータになるでしょう。
また、自動運転車の学習に活用される映像・分析データは人が運転する車輌や実験用の自動運転車に搭載された装置から集められ、それは何万時間何十万キロを超える圧倒的な走行情報として蓄積されていきます。

人工知能の学習にはこうしたビッグデータが必要であり、どんな情報を持っているかによってどんな人工知能を開発できるかが変わってきます。

医療データを扱う企業なら医療関係の人工知能を開発できますし、自動車を扱うメーカーなら自動運転車、警備会社なら監視カメラのデータから警備ロボットを開発できるかもしれません。全ての会社が人工知能の作り手になれるとは限りませんが、人工知能を開発のプラットフォームを有する大手企業の力を借りればそれも夢ではありません。

1-3.人工知能の応用技術と付随するビジネスサービス

既に様々な企業が人工知能の開発に着手しており、一昔前まではチェスぐらいしかできなかった人工知能も様々な事ができるようになりました。既にサービスとして提供されているものも多数あります。具体例を幾つか挙げていきましょう。

■画像認識

画像や動画を見てその映像が何の映像なのかを判断する画像認識は人工知能の応用技術の最たるものです。
Googleの人工知能が猫を認識した話は有名ですが、Microsoftも独自に画像認識技術を開発し、顔認証のサービス「FaceAPI」を提供しています。
これはパスワード代わりに顔を認識してログインなどを行うためのサービスですが、他にも様々なサービスに広げていける拡張性の高い技術です。

■言語と音声認識

人間が打ち込んだ文章を理解する言語認識と声を言語として理解する音声認識を組み合わせると、本当に機械が人間になったかのような人工知能が生まれます。それがAppleの「Siri」とGoogleの「Google Assistant」です。

ユーザーが「今日のスケジュールは?」と尋ねればユーザーのカレンダーなどを参照して予定を説明してくれますし、「音楽が聞きたい」と言えば音楽を流してくれます。これは自分だけの秘書を手に入れるようなものでしょう。

■自動運転

人工知能技術の粋を集めたのが自動運転の技術です。自動運転には画像認識による状況判断能力に加えて、状況に応じて適切な判断を行う能力が必要になります。人工知能の応用技術の中でも特に難易度の高い技術ではあるものの、自動運転車の市場は広く、将来的には貨客業や運送業への応用も可能になります。

既に幾つかの自動運転車が実用レベルに達しており、他の車輌を認識して充分な距離を保ちつつ道に沿って走るというだけであれば、テスラモーターズの自動運転が市販されています。また、信号や標識などを認識できるものではGoogleセルフドライビングカーが試験運用中です。

2.人工知能が広がる社会の中でどんなビジネスが生まれるか

2-1.ビジネス界に起こる変化

人工知能の開発が順調に進み、既にサービスとして提供されているものもあることは分かりました。しかし、この殆どがGoogle・Apple・Microsoftなどの世界でもトップクラスのIT企業です。小さな企業のビジネスには何の影響も無いように思われますがそれは違います。

GoogleやMicrosoftが提供しているサービスを一般企業が使うことは可能ですし、そこから派生するビジネスに大きな変化が起こる可能性があります。

まず、一番大きな変化は人的資源の節約です。
人工知能によって半数近い職業が無くなると言われているのは周知のことです。
これは逆に言えば既存の仕事の半数が人工知能に置き換えることができるということです。つまり、経営者側からすれば雇うべき人間が半分で済むということにほかなりません。

浮いた予算で優秀なビジネスマンを雇うのも良いですし、新しいビジネスを始めるのも良いでしょう。人工知能の進歩はコストカットという面で大きなメリットがあります。

もう一つの大きな変化が情報分析の精度・期間の向上です。
ある意味では人的コストの削減に通じるものがありますが、そもそも人間には処理できなかった膨大な情報の分析が可能になります。これによって情報分析の精度が高まりますし、情報分析から意思決定にかかる時間も短縮されるでしょう。

例えば一分一秒を争うFXや株取引では非常に重要な技術で、システムトレードの技術として実際に活用が始まっています。

2-2.顧客一人一人に与える影響

情報分析の精度・期間が上がるということは、顧客一人一人に合わせた提案が可能になるということでもあります。
ユーザーの趣味嗜好を理解して商品を提案する「Amazonのリコメンド機能」や「Googleの広告表示」などに使われている分析技術が進歩すれば、ユーザーはどんなサービスでも最適な商品提案を受けることができるようになるでしょう。

商品提案以外でも、自宅や福祉施設で使うような製品にユーザーの心理状況を分析する機能が搭載されるようになれば、ユーザーの微妙な体調変化に応じて最適なサポートができるようになります。

また、同じようなシステムを商業施設の監視カメラや警備装置に導入すれば、セキュリティの向上に加え、店舗の配置や顧客の流れを把握することにも役立つでしょう。人の挙動をただ監視するだけではなく、どこで足を止めたか、何を欲しそうに眺めていたか、どんなルートを歩いていったか、それぞれの情報を分析することで施設の最適化ができるようになるはずです。

一つ一つは小さな変化ばかりでしょう。しかし、こうした変化が顧客の周りで当たり前になったとき、「病気に気づけた」「買い物が楽になった」というような大きな変化に変わります。

2-3.人工知能のビジネス利用の事例

人工知能が潜在的に大きな変化を生む力があったとしても、それはまだまだ先のことのように思えるでしょう。確かに人工知能の技術では試験運用段階の技術が多いです。しかし、すぐにでもビジネスに活用できるものも幾つかあります。

■コールセンターの補助

音声を認識し最適な答えを返す機能を持つ「IBMのワトソン」が良い例でしょう。既にみずほ銀行のコールセンターなどに導入され、一定の成果を上げています。

コールセンターでは顧客から様々な質問を投げかけられますが、オペレーターが全ての答えを知っているとは限りません。状況に応じてオペレーターが社内システムで検索を掛けながら回答を見つけます。これが中々時間のかかる作業なのですが、みずほ銀行のコールセンターではワトソンがその質問を聞いて回答を表示してくれるのです。

さらに、ただ回答を示すだけではなく電話の中から相手のニーズを探り出し、新しい提案を行うことで営業活動に繋げる方法も模索しているようです。これはコールセンターに限らず、電話営業を行うタイプのビジネスにも応用が可能でしょう。
通話内容を人工知能に分析させ、人工知能からアドバイスを貰いながらビジネスマンが商品提案を行えば、より最適な提案を行えるようになりそうです。

■監視カメラの顔認証

監視カメラに顔認識技術を導入したサービスも既に実用化されています。過去に問題を起こした人物などの顔を登録することで、その人物がカメラに映った時に通報してくれるサービスです。
学校や福祉施設に導入すれば、より低コストで安全な環境を作れるかもしれません。

危険人物を把握できるということは、危険ではない人物も判別しているということになります。建物内に入って良い人と良くない人を判別できるようになれば、入館管理も容易になるでしょう。
入場券の代わりに顔を登録すれば、正に「顔パス」で色々な建物内に入ることができるようになります。必要なのはカメラだけですので、入場管理に必要なコストも大幅に削減できるはずです。これも新しいビジネスの一つの形ではないでしょうか。

まとめ:人工知能を活用した多くのビジネスが生まれる

人工知能はSFの中だけの技術ではなくなりました。実用レベルの技術が次々に開発され、既に様々なサービスに導入されています。

新しい技術が生まれ、それによって社会に大きな変化が起こる時には大きなビジネスチャンスが隠れているものです。
インターネットやスマートフォンの登場に合わせて様々なビジネスが登場したように、人工知能の実用化でも数多くの新規ビジネスが生まれることでしょう。

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